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古書展で高見順と日本郵船時代の内田百間と岡田八千代。

土曜日。図書館を早々に切り上げて、昼下がり、神保町に出る。東京古書会館の「書窓展」へ出かける。「まど展」はひさしぶり、まア、ゆるりと棚をめぐるとするかと、時間があいたので軽い気持ちでノコノコとここまでやって来たのだったけれど、いざ来てみたら、五臓六腑にしみわたるというくらいに、古書展会場ならではの濃厚な時間を心ゆくまで満喫。ああ、楽しかった!


高見順がちょっと気になっている昨今、あきつ書店の棚に高見順がたくさん売っていたのはグッドタイミングだった。著書リストでのみタイトルを知っていたあんな本やこんな本はこういう造本および目次およびあとがきになっていたのか、ウムなるほど……と次から次へと手にとっては棚に戻すの繰り返し。そんなことをしているうちにすっかり我を忘れている。その姿はさながら口をあけてパクパクと餌にむらがる池の鯉のよう。とりあえず今回は、このたびの「戦前の高見順の都会小説」ブームのきっかけとなった『外資会社』のテキストを手元に置くべく、『高見順自選小説集』(竹村書房、昭和16年2月)の裸本(400円)を買っておくことにする。装釘は三雲祥之助。完本はどんな装本になっているのかなと想像するものたのし、なのだった。刊行の直前の昭和16年1月、高見順と三雲祥之助はジャワとバリ島へ旅行に出ている。『高見順日記』全9巻のはじまりは昭和16年で、ちょうど図書館で借り出し中。




今回買った本で一番嬉しかった本として、内田百間『船の夢』(那珂書店、昭和16年7月30日)。函は百間の筆跡でタイトル。



本体の版画意匠は、織田一磨による。今まで見たどこよりも安くどこよりも美本だったのでホクホクと買った。戸板康二が明治製菓宣伝部に入った昭和14年4月とほぼ時をおなじくして、百間先生は辰野隆の推薦で日本郵船の嘱託となった(解任は昭和20年11月)。郵船時代とほぼ同時期、明治製菓の PR 誌「スヰート」に随筆を寄稿していた百間。戸板康二は京橋の明治製菓ビルから鍛冶橋通りを歩いて、丸の内の郵船ビルへ原稿を受け取りに行った。というような、百間との交わりは、学生の頃からの大の百間ファンだった戸板康二にとって、「スヰート」にまつわるエピソードでもっとも幸福なものであることは確実。……というような次第で、「日本郵船の内田百間」に心ときめかして幾年月、日本郵船時代が反映、もしくは、「スヰート」初出の文章が収録されている百間本はとりあえず旺文社文庫で揃えてわが書架の「スヰート」コーナーに並べてある(『菊の雨』『船の夢』『沖の稲妻』『戻り道・新方丈記』『鬼苑横談』、『けぶりか浪か』)。そんなことをしていうちに、旺文社文庫の元版も欲しくなって、鳥が粟を拾うように少しずつ揃えている。今回の『船の夢』が3冊目。