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初芝居のあとの昼下がり、東京會舘でアイスクリームを食べる。

今日も朝からよいお天気。青い空の下、歌舞伎座に向かって、テクテク歩く。本日の iPod はハイドンのオラトリオ《天地創造》、ガーディナー指揮。皇居のお濠端で、カモメがスーッと高いほうへ飛んでいくのが見えて、スーッといい気持ちになる。歌舞伎座昼の部。吉右衛門の一條大蔵卿と雀右衛門の『けいせい浜真砂』を見る。おそらくわたしにとっては今日が雀右衛門の見納めのような気がするのだった、と勝手に見納めてしんみりと劇場を出て、銀座の人混みにまぎれて、二、三、必要な買い物をやっとのことで済ませて、ずいぶんくたびれた。ゼエゼエと丸の内方面へと早歩きして、東京會舘へゆく。窓際のテーブルでコーヒーを飲みながらアイスクリームを食べて、一人で新年会。持参の本を次々に繰って、しごくのんきな昼下がり、であった。岡本綺堂『青蛙堂鬼談』(角川文庫、昭和36年)を読んだり、沼波瓊音『意匠ひろひ』(国書刊行会、2006年)を拾い読みしたり、福原麟太郎『春興倫敦子』(研究社、昭和10年)を繰ったりしているうちに、いつのまにかお濠端に夕日が射している。テクテクと家路をゆく。歌舞伎座も銀座もどこもかしこも人混みばかりだったけれど、神保町のすずらん通りは夜中みたい。そんな非日常の神保町をツカツカと歩いて、スーッといい気持ちになった。


そんなこんなで、「日用帳」の新しい一年がはじまりました。あけましておめでとうございます。いい一年になりますように。




柴田宵曲『アイスクリーム漫筆』(東京アイスクリーム協会、昭和39年5月8日発行)。戦前の明治製菓宣伝部をとりまくあれこれに夢中のこの一年、古本屋に入るとついいつもお菓子文献を物色してしまうのだったけれども、ある日のキントト文庫でふらっと買ってしまったのが、「アイスクリームと日本文学」という副題のついた柴田宵曲による小冊子。文芸とのコラボレーションによる製菓業界の PR というところが、戦前の明治製菓の広報誌「スヰート」を髣髴とさせて、フツフツと嬉しかった。「sige」とサインがついているけれども挿絵画家は判別できず。この『アイスクリーム漫筆』は「氷菓漫筆」として『柴田宵曲文集 第五巻』(小沢書店、平成3年2月)で読むことができる。




濱谷浩《東京丸の内 東京會舘周辺》1936年。『モダン東京狂詩曲展 図録』(東京都写真美術館、1993年)より。