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恵比寿で写真展を見たあと、目黒のウエストで「四季の味」を繰る。

そろそろ日没という頃、日比谷線の先頭車両にのりこんで、恵比寿へ出かける。地上に出るとすぐ先は恵比寿南交差点。クルッと左折して、目黒三田通りの坂道をテクテクと歩く。ガーデンプレイスに出かけるときは日比谷線に限る。目黒三田通り、アメリカ橋経由のガーデンプレイスへの道のりが好きだ。


東京都写真美術館(http://www.syabi.com/index.shtml)にて、《「昭和」写真の1945-1989》展の第1部、「オキュパイド・ジャパン(占領下の日本)昭和20年代」を見物。このところ、昼休みの本屋さんで毎日のようにホクホクと立ち読みしているのが、『GHQカメラマンが撮った戦後ニッポン−カラーで蘇る敗戦から復興への記録』(asin:490387012X)という本。写真や映画で見るこの頃の日本はたいてい白黒だから、カラーというだけであっと新鮮な驚きがあって、実際に見てみると思っていた以上にたのしみが尽きないのだった。演劇ジャーナリストの戸板康二が歩いていた東京の町並みや、ロッパ人形を片手に舞台化粧姿で写る古川ロッパや『モルガンお雪』のキュートな越路吹雪の姿も全部カラー! 買ってしまいそうになったけれどもグッとこらえて、現在図書館で順番を待っているところ。部屋でじっくり眺めるのがたいへん待ち遠しい。 …と、そんなこんなで、連日の立ち読みでGHQの写した「占領下の日本」が心にベッタリと貼りついていたところだったので、絶妙なタイミング。ほどよく見物人がいる展覧会場をのんびり練り歩いて次々と写真とその写真家を見物するひとときはなかなかよかった。福田勝治の女性写真にはっと目をこらす。


1階の売店で植田正治の写真集を立ち読みして外に出て、三田橋を渡って、ふたたび目黒三田通りに出る。ウエストでコーヒーを飲んで、サンドイッチをつまむ。ブランデンブルク協奏曲が流れたりモーツァルトのピアノソナタや変奏曲が流れたりする店内で、先週昼休みに買ったまま読みさしだった「四季の味」夏号をおしまいのページまでじっくりと繰る。「四季の味」がウエストの店内にとても似つかわしくて、格別のひととき。大江良太郎の遺著、『家 久保田万太郎先生と私』(青蛙房、昭和50年)の再読を一通り終えて席を立とうとしたとき、シューベルトの即興曲集が始まった。もう少し座っていることにする。店員さんがおかわりのコーヒーを注いでくれた。




河原侃二著『ヴェス単作画の実技』(光大社、昭和11年月)。田中眞澄『小津安二郎と戦争』(みすず書房、2005年7月)所収の「ベス単とマンドリン」で知った本。著者の河原侃二(かわはら・かんじ)はベス単の名手として知られた当時のカメラ雑誌の常連であり、蒲田・大船時代を通しての松竹の脇役俳優で、小津のサイレント映画にも何度か出演しているとのこと。《大正後期から昭和初年代にかけては、カメラはベス単の時代だった。》。小津安二郎の写真趣味としてよく語られる1930年代のライカの前史に、中学時代の「ベス単」があるのだという。1920年、松竹キネマ研究所における北村小松も「ベストのキヤメラ」をこよなく愛好。……と、マサスミ先生の文章が魅惑的なあまりに買ってしまった本。専門書でほとんど読みこなせないにも関わらず、松竹の脇役俳優による『ヴェス単作画の実技』にただようモダーンなオーラにうっとり。現在本棚の一番目立つところに置いてある。ベス単というと、『植田正治ベス単写真帖・白い風』(日本カメラ社、1981年)という本がある。近々図書館で閲覧したい。