読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

阿佐ヶ谷で映画を見たあと、五反田で串田孫一旧蔵書を買う。

春休み1日目。ラピュタ阿佐ヶ谷へ出かける。モーニングショウにて上映の、西河克己『東京の人 前後篇』(昭和31年・日活)を見る。日本映画におけるわが必携書、「ノーサイド」1995年2月号《戦争が匂う映画俳優》の滝沢修のところで丹野達弥が「おすすめ作」に『東京の人』を挙げている、というただそれだけの理由で、とりあえず見に来たのだった。冒頭、関西出張から戻る滝沢修を乗せた列車の線路をとらえた移動映像が「東京の人」というタイトルを象徴していて、いかにもいい感じでさっそくにっこり。滝沢社長を迎えるのは秘書だか事務員だかの新珠三千代。ノースリーブのブラウスにタイトスカートの事務服の新珠三千代がむちゃくちゃ美しくて、人生に疲れた滝沢を優しく迎える「かわいい女」、とにかくも壮絶なまでにきれいなのだった。滝沢修といえば新珠三千代にご執心だったというエピソードがおなじみなので、滝沢としては役得もいいところ。「やってる、やってる」とさっそくにんまり。月丘夢路主演作はなぜだか苦手な映画が多い。今回もそれを踏襲するにとどまってしまったけれども、白黒シーンに映し出されるロケ地東京が目にたのしく、「銀幕の東京」のたのしみはずいぶんあったし、俳優見物もなかなかたのしかった(ちょいと曲者の女を演じさせると絶品の左幸子)。壮絶に美しい新珠三千代の姿が一番心に残った映画だった。



内村直也『ラジオドラマの話』(現代教養文庫、昭和32年5月)。滝沢修と新珠三千代の表紙写真目当てで買った本。カバー裏に、《この写真は『女の歴史』の本番で新珠三千代さんの扮する「智恵」が、滝沢修さんの「庄左ェ門」に心の秘密を打ちあけている場面です。滝沢さんは次の台詞の準備のアクションをおこしています。》とある。



昼下がり、五反田の古書会館へ出かける。先週届いた目録にて月の輪書林が前回に引き続いて串田孫一旧蔵書をたくさん出していたのだけれど、今回はそのなかに戸板康二著作が何冊もあって、心は躍るばかりだった。



と、そんなこんなで、今回の五反田古書展でのお買い物のうちの1冊が、戸板康二『街の背番号』(青蛙房、昭和33年9月)。「献呈署名本」だけれど、『街の背番号』にかぎっては本体ではなく、タイトルページとおなじ紙が1枚別に本に挟んであって、そこに「献呈署名」がされていて、ワオ! 岡村夫二のチャーミングな挿絵が嬉しい。額に入れて、書斎(というほどのものではないが)の片隅に飾りたいなと思った。すでに持っている本をつい買ってしまったのだけれど、買ってよかった。いつまでも上機嫌。



ひさびさに古書展でわんさと買い物して、満足なり。目黒のウエストでビスケットをつまんでコーヒーをすする。串田孫一旧蔵書の棚から買った、岸田國士『落葉日記』(角川文庫、昭和26年)を繰る。その合間に岡村夫二の挿絵のタイトルページを何度も何度も眺めてにっこり。古書会館を出たときはずいぶんあたたかだったけど、夕刻、外にでると空気がひんやり。春休み一日目はあっという間に終わってしまった。