松本八郎さんの文章を読んで長谷川りん二郎の画集を眺める。

朝。昨日図書館で借りた、坪内祐三『古くさいぞ私は』(晶文社、2000年)を繰る。松崎天民のことがなにか書いてあったような気が、と淡い記憶を頼りに借り出したのだったけど、目次を眺めてみると、あったあった、目当ての「昭和『食べある記』ブーム考」があった、と当該のページを繰り、フムフムと熟読。さっそく、ゆまに書房の「コレクションモダン都市文化」で概観したばかりだった白木正光編著『大東京うまいもの食べある期』(丸ノ内出版社、昭和8年)が引用されていて、極私的にタイミングがよい。ランランと読み進める。昭和初期の「食べある記」ブームについて論じ、話題は昭和30年代の「食べある記」ブームへと転じ、松崎天民の「食道楽」と対になるようにして、ブームを象徴する雑誌として「あまカラ」のことが語られてゆく。その背後にあるのは、昭和初期のブームと同様に「デパートの増・新築ブーム」。《戦前のデパートブームが銀座や日本橋に集中していたのに対し、この頃、昭和三十二年、三年のデパートは、さらに広いエリア、新宿や渋谷、池袋といった戦後に飛躍的に発展した私鉄の始発駅、いわゆる駅前ターミナルに延びて行く》。坪内祐三の明晰な文章にノリノリ、大いによろこぶ。戸板康二の青年期を過ごした戦前モダン都市文化と同時期だった「食道楽」に、戸板康二がちょくちょく登場した「あまカラ」、戸板康二の筆がますます冴えてゆき、脂がのるのと同時期だった「あまカラ」と、むりやり戸板康二に結びつけて、大いによろこぶ。それはそうと、「sumus」第9号《あまカラ洋酒天国》(2002年5月発行)をあらためてじっくりと読まねばならぬ、と手帳にメモ。



夜。「日本古書通信」の切り抜きを整理。去年1年間たいへんたのしみにしていた松本八郎さんの連載「書物のたたずまい」をファイルに綴じてまとめて参照できるようにする。と、そんなことをしているうちに読み返してそのたびに「おっ」となるのはいつものこと。最終回の第12回で版画荘の《版画荘文庫》が取り上げられており、本文に目を転ずると、さっそく長谷川りん二郎の名前が登場していて「おっ」。このところ、長谷川りん二郎に行き当たってばかりだ。

二月号に取り上げた《新風土記叢書》前半の、その表紙の装画を手掛けた長谷川りん二郎のタブローのなかに、《版画荘文庫》をモチーフにした作品が数点ある。描かれた本の表紙には書名が書き込まれていないので、その色合いから推測するしかないが、りん二郎のアトリエに、この《文庫》が何巻架蔵されていたのだろうかと、想像するだけでも楽しい。

【松本八郎「版画荘《版画荘文庫》」-「書物のたたずまい(12)」、「日本古書通信」第71巻第12号】


いいな、いいなと、長谷川りん二郎の画集(『夢人館4 長谷川りん二郎』岩崎美術社、1990年)を開いて、大いによろこぶ。



長谷川りん二郎《水中花》1965年。



長谷川りん二郎《アイスクリーム》1981年。