十一谷義三郎を読み、「みすず」を買い、『大菩薩峠』に興奮する。

昨日に引き続いて、朝の喫茶店でいつまでも往生際悪く扶桑書房の目録の眺める。先月石神井書林で散財したばかりなので、今回は諦めなければならぬのだった。ふう。心の隙間を埋めるべく持参した、EDI 叢書の『十一谷義三郎 五篇』(2000年3月刊)を繰る。モクモクとタバコのけむりがたちこめる喫茶店で読む『バット馬鹿の告白』は格別だ。そんなこんなしたあと、とっくに処分していたつもりがまだ残っていた『日本映画ベスト150』(文春文庫ビジュアル版、1989年)を眺める。こういう本はたまに気まぐれに眺めるとそのたんびに結構たのしんでしまう。菊村到による「私の山中貞雄体験」という一文が目にとまる。稲垣浩の『大菩薩峠 第一篇 甲源一刀流の巻』(昭和10年)の机龍之介は大河内伝次郎、キャー! と心のなかで大はしゃぎ。共同監督した山中貞雄が撮ったのは机龍之介が宇津木文之丞を殺す奉納試合のシーンらしい、と手帳にメモ。


日没後、またたくまに外に出て、鍛冶橋通りをゆく。八重洲ブックセンターに足をのばして、「みすず」1・2月合併号《読書アンケート特集》315円を買う。明治屋に寄ったあと、フィルムセンターへ。映画がはじまるまで、「みすず」をランランと繰る。


《シリーズ・日本の撮影監督 (2)》特集開催中のフィルムセンターにて、内田吐夢『大菩薩峠 第一部』(昭和32年・東映)を見る。千恵蔵の机龍之助! これが見たかったのだ、無事にスクリーンで見られてやれ嬉しや、と歓喜にむせぶ。と、見る前から歓喜にむせんでいたのだけど、見ているときもずっとハイテンション、こういう時代劇が一番好きだ! と、娯楽作でありながらも香気あふれる仕上がりなのがたまらない。あちらこちらにシビれる。時々何を言っているかよくわからぬ千恵蔵の妙な低音発声にシビれる、絵に描いたような悪役ぶりの山形勲にシビれる、錦之助の絵に描いたようなさわやかぶりにシビれる、もうけ役の月形龍之介にシビれる、往年の伝次郎ファンも納得の大河内伝次郎の役柄にシビれる、などなど以下略。とにもかくにも千恵蔵の机龍之助がたまらない、キャー! と興奮しているうちにあっという間に映画は終わり、続きは明日を待たねばならぬのだった。外に出てみると、小雨がパラついている。麦酒とワインをグビグビ飲んで、来るべき『大菩薩峠』の続きに胸躍らせる。


明日に備えて早々に寝るつもりが、DVD に録っておいた山口淑子の引退記念映画、 山本嘉次郎『東京の休日』(昭和33年・東宝)のことをふと思い出した。よせばいいのにちょいと様子をみてみることにする。あたかも俳優祭のような総出演な豪華配役とは裏腹なあまりにチープな映画の仕上がり具合に度肝を抜かれ、ここまでくると、すごい。なんじゃらほいと、つい見入ってしまう。クレジットに名前の出ていたあの人はどこにいたのだっけ、と再び早送りしたりなんかしているうちに、つい宵っ張り。日本の歌をメドレーで歌う越路吹雪のシーンがわりと長かったのはよかった。越路吹雪の着物姿が好きだ。