浅草で映画を見て、上野でとんかつを食べる。

強風にあおられながらやっとのことで洗濯物を干したあと、近所を散歩。図書館に本を返し気まぐれにまた何冊か借りて、食料品を調達して帰宅。借りたばかりの小谷野敦『谷崎潤一郎伝』(中央公論新社、2006年)を途中まで読んだところで外出。銀座線にのりかえて、いざ浅草。田原町で降りるつもりがうっかり終点の浅草まで行ってしまった。地上に上がるときの階段が『警視庁物語』に出てきそうな風情で、いいないいなと上機嫌になったところで地上に出、出たところは市川崑の『青春怪談』に登場したところではなかったかな、いいないいなとさらに上機嫌になる。浅草に来ると、いつもそれだけでうれしい。人混みにまぎれて、ノロノロと浅草名画座へ向かう。


無事に座って見られますように! と映画館に潜入すると『三丁目の夕日』がもうすぐ終わろうというところ。早く終わらないかなと暗いなか目をこらせ座席を物色し、場内が明るくなったところで狙っていた空席にイノシシのように突進。無事に座れて、やれ嬉しや。当初の計画通り、自分内二本立て、ということで、マキノ雅弘『関東緋桜一家』(昭和47年・東映)と松田定次『水戸黄門 天下の副将軍』(昭和34年・東映)を見て、外に出るととっぷりと日が暮れていた。ああ、おもしろかった! 藤純子引退記念映画は配役がこれでもかと豪華で、とってつけたようなハッピーエンドが味わい深い。錦之助の時代劇も配役がこれでもかと豪華。月形龍之介の水戸黄門と悪役の山形勲がクーッと五臓六腑にしみわたる。二本一緒に見てみると、水戸黄門では綱吉役だった若山富三郎の個性の開花具合がおもしろかった。東映時代劇というと、去年フィルムセンターで見た『赤穂浪士』が面白かったなあ。というわけで、時代劇の系譜のようなものをこれから追及したい、ような気がする。


強風にあおられながら、仏壇屋がひしめく浅草通りをズンズンと直進し、上野にたどり着いたところで左折すると、とてつもない向かい風が顔面をおそう。わたしの人生のようだ、と思いながら、なんとか前方へ向かう。「とんかつが食えなくなったら死んでしまいたい♪」と鼻唄まじりでさらにズンズンと直進。井泉本店でとんかつを食べる。隣のおじさん三人連れは小さん襲名について語り合っている。