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年末の京都大阪二日間・走り書き

関西遊覧日記


ドンぺリニヨン1995年とオーパスワン2000年をグビグビ飲んで帰京すると、郵便受けに年賀状と「日本古書通信」1月号と「新演劇人クラブ・マールイ第2回公演プログラム『女優の愛と死』」が入っていた。


お正月休み2日目の12月30日、新幹線にのって正午京都へ。権太呂で山かけそばを食べたりぎぼしで昆布茶を買ったり有次の人混みにまぎれたりしたあと、阪急電車の特急にのって大阪梅田へ。マルーン色の車体に緑色の座席、阪急電車はいつ見てもなんとチャーミングなことだろう! と嬉しい。のみならず座席はボックス席! 一気に旅情が盛り上がって嬉しい。特急なのに料金は普通列車と同じで嬉しい。車内の宝塚歌劇のポスターが嬉しい。いつか京都から阪急にのって宝塚観劇に出かけたいものだ、来年こそ必ずやとメラメラと決意して嬉しい。……などと、1年ぶりの大阪行き(京都の方は2ヶ月ぶり)に大はしゃぎしているうちにいつのまにかスヤスヤと寝てしまい、目を覚ますと十三を通過したところ、やがて車窓は淀川の鉄橋になった。阪急の梅田駅のホームのなんと壮観なこと! と1年ぶりの歓喜にいつまでもひたりながら、改札へと歩を進めるその途中、嬉しいあまりに何度も後方を見やり、ホームを見渡してしまうのだった。停車中の電車の先頭のところに、今はもうあまり使われることもなさそうな表示板(かしら?)が何枚かささっていて、思わず手にとってじっくり眺めてにんまり。改札口の近くにあるライラックという名の喫茶店が味わい深く、窓際の席に座ってコーヒー片手にホームを見渡すのもなかなかオツなことだろうと思う。とかなんとか、阪急電車になにをそこまではしゃいでいるのか自分でも謎なのだった。


梅田にたどりついてまっさきに向かったのは阪急古書のまちだったのだけど、心ならずも買い物はなし。ただ、杉本梁江堂で枝雀の『つぼ算』が流れていて、なんとも見事な BGMで、本の背表紙を眺めながら耳を傾けるのが本当にもうなんとも至福だった。いつまでも聴いていたかった。関西気分を盛り上げるべく前日の神保町で仕入れた「エルマガジン」最新号(コーヒー特集)を新幹線の車中で眺めていたら、はじめて大阪に出かけた2000年の年末に出かけた平岡珈琲店が載っていて、あのコーヒーとドーナツとあの空間をふたたび味わえるとしたらなんて嬉しいことだろうと、古本を見たあといさんで出かけてみたら、お休み(大掃除の真っ最中だった)で寒空の下、がっくりと肩を落とす。ああ、いつかまた。


日没時、ホテルからの散歩がてらの建築見物を満喫していると、いつのまにか堂島アバンサの前に来ていて、大興奮。大阪といえば堂島アバンサのジュンク堂! と2006年にたいへん堪能した書き手のひとり、三輪正道の文章を思い出して嬉しかった。さっそく足を踏み入れ、これが見たかったのよ! と、編集工房ノアコーナーへ突進。一通り棚をめぐってずいぶん楽しかった。と言いつつ、何も買わず、「ちくま」をもらって外に出る。リーチバーでジントニックを飲んで、夜がふけた。


おおつごもりの朝、朝日新聞社沿いの水上瀧太郎の『大阪の宿』の文学碑を見に行き(好きな小説ではないが)、淀屋橋に向かって河岸を歩いていると、カモメがたくさん飛んでいてとてもきれい。海は近いなあと冬の朝のツンとした冷気が気持ちよかった。さて、淀屋橋からは京阪電車にのってふたたび京都へ。去年初めて京阪電車にのったときは大感激だった。ボックス席で旅情が盛り上がって嬉しい。二階建て車両が嬉しい。でも料金は普通料金と同じで嬉しい。淀川に沿って京都から大阪へ向かうというのが落語の『三十石』そのまんまで嬉しい。というわけで、京阪電車にふたたび乗るのをとてもたのしみにしていたのだった。念願かなってやれ嬉しやと、なんとしても二階建て車両の二階席に乗らねばと目が血走ってしまい、目を血走らせた甲斐あって無事に二階席に座ることができて、大いによろこぶ。後ろの席には少年とおじいさんが座っている。少年はかなり鉄道好きの模様。どこかの駅で各駅停車に乗り換えてそのあと奈良線にのって、それから先はあとで考えると嬉しそうにおじいちゃんにしゃべっていたその少年はどこぞやの駅で各駅停車に乗り換えるべく、降りていった。そんなこんなで、早くも終点の出町柳。叡山電車に乗り換えて、一乗寺の恵文社に行った。


「恵文社・冬の大古本市」での買い物は、「すむーす堂」の棚から小沢書店「ポエティカ」5冊セット(2000円)。六曜社の地下でドーナツを食べてコーヒーをすすって、柴田宵曲特集号を繰った。


さて、お次は三月書房。欲しい本がたくさんあって難儀なことだと、散々長居したあげくに買ったのは、杉山平一『戦後関西詩壇回想』(思潮社、2003年)と加藤一雄『雪月花の近代 京都日本画の100年』(京都新聞社、1992年)と EDI 半額コーナーから『EDI 叢書中仕切り 少々自慢 この一冊』(2001年)。足どり軽く三月書房をあとにして、今日も営業中とはなんと嬉しいことだろうと、村上開新堂でロシアクッキーを買って、寺町通りをくだった。



今年10月に母と京都一泊旅行に出かけた折も三月書房に出かけていて、そのときは、念願だった加藤一雄の『京都画壇回顧』(用美社、1984年)がそこにあるのが当然のようにそこにあって、大感激だった。さらに、お会計のとき、今度同じ出版社から加藤一雄さんの小説集が出るのですよと教えていただい、ジーンといつまでも大感激だった(http://3gatsu.seesaa.net/article/26194868.html)。今回も『京都画壇周辺』はそこにあるのが当然のように売っていて、『雪月花の時代』は当然、『京都画壇周辺』の隣りに並んでいた。この前来たときもあったのかな。ちょうど1年前の年の暮れに、三月書房で山田稔の『ああ、そうかね』(京都新聞社、1996年)を買っている。新しい年の年明けの本読みは1年前とおんなじように、三月書房で買った京都新聞社の本になるというめぐりあわせが嬉しい。そして、京都に出かけるといつも、三月書房で本を買って、そのあと必ず村上開新堂でロシアクッキーを買っている。そんなわけで、京都がえりのあとは、しばし部屋でロシアクッキーを食べながら三月書房で買った本を読む、という日々がしばらく続くことになる。おおつごもりも村上開新堂が開いていて、よかった。


とかなんとか次に向かったのは、新京極スタンド。お正月休みならではの極上のぜいたく、それは昼酒。ということで、グビグビと飲み続けて、いつまでもここにいたいなあと至福にひたって夕暮れになった。

参考リンク:http://homepage2.nifty.com/entetsu/s/sutando.htm(「ザ大衆食」より)


大阪のホテルで、『EDI 叢書中仕切り 少々自慢 この一冊』所収の、加藤一雄の『無名の南画家』について綴った山本善行の文章を何度も読み返して、2006年が終わった。