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テオプラストス『人さまざま』を買い、初めて『警視庁物語』を見る。

日中、長らくおきっばなしにしていた本をいいかげん持ち帰るべく整理していたら、福原麟太郎『読書と或る人生』(新潮選書、昭和42年)が出てきた。何ヶ月も前に読みさしのまま放置していたらしい。残りあとわずかだったので、気が向いて昼休み、コーヒーショップでパラパラと繰って、いつもの福原麟太郎読みとまったく同じように、そこはかとなく清々とした気持ちになり、いつのまにかなんとなく嬉しくなっている。開いたページは随筆について語っている箇所で、モンテーニュ『エセー』やチャールズ・ラム『エリア随筆』について言及したあと、一番古い随筆はテオプラストスの『人さまざま』であろう、こういう人間描写が17世紀ごろの西欧で模倣され、それがやがて「随筆」になり、随筆の人間性描写を文学に転じて「近代小説」というものが生まれることとなった云々、というようなことが書いてあるのを見て、フツフツと『人さまざま』を繰ってみたくなった。岩波文庫の『人さまざま』といえば、訳者の名前にちょいとインパクトがあるという、ただそれだけの理由で記憶に残っていたのだけれど、あの本は今も出ているのだろうか。


日没後、銀座に寄り道。三越の日用品売場でお弁当箱とヴァクスボリンのふきんを買って、そろそろ帰ろうかなというところで、ふと思い出して教文館に立ち寄る。岩波文庫売場に突進してみると、テオプラストス/森進一訳『人さまざま』岩波文庫(ISBN:4003360915)がひっそりと棚にささっていて、ジーン。やれ嬉しやとレジに直行、帰りの電車のなかで、ペラペラと『人さまざま』を繰って、にんまりしているうちに最寄り駅に到着。



夜、東映のシリーズ映画「警視庁物語」の DVD があったので、気が向いて、今日のところは『警視庁物語 白昼魔』(関川秀雄監督・昭和32年)というのを見てみることにする。「警視庁物語」なるシリーズを見たのは今回が初めてだったけど、犯人を追跡するというだけの深みのないストーリーをたどるうえでおのずとロケが多用。なので、全篇で「銀幕の東京」見物がたのしく、風俗資料という点で非常によくできている映画だった。初っぱなから、昔の新橋第一ホテルが出てきてウキウキだった(木村功がホテルから出てきた外国人を銃殺して逃走、が発端)。日比谷のドライブインのジュークボックスや並木通りの様子など、いろいろと目にたのしく、東海林さだおの漫画でしか見たことのなかった「トルコ風呂」の実際の映像を見られたりと、なにかと貴重だった。ひねりのなさすぎるストーリー展開のおかげでかえって背景の見物に集中できてなかなかよいかもしれぬ。これはしばらく「警視庁物語」シリーズを追わねばならぬ! と目には炎がメラメラなのだった(すぐに飽きそうだけど…)。