野口冨士男『徳田秋声の文学』を繰り、保昌正夫が届く。

早起きをして、喫茶店でコーヒーを飲む。野口冨士男『徳田秋声の文学』(筑摩書房、昭和54年)を取り出し、「『仮装人物』の副女主人公」の項をじっくりと腰を据えて熟読して、すっかり目が覚める。『仮装人物』をもう一度腰を据えて、読み直したいものだと思う。

徳田秋聲という名を聞くと、「黴」「仮装人物」などの作品をおもい出すと同時に、「野口冨士男」という名が頭に浮ぶ。また、「風景」という雑誌の名も出てくる。私が「風景」三代目の編集長を昭和四十年から二年間つとめたとき(野口さん初代)、野口冨士男「秋聲追跡」が連載になっているし、四十一年二月号の編集後記には、『徳田秋聲伝』が毎日藝術賞になった祝いの会のことを、私が報告している。
今回の労作の一部には、十四年前のその「風景」掲載分が元になっているのもあるわけで、その粘り強さ、徹底的に調べ抜くやり方には驚嘆する。しかも、野口冨士男氏は小説家であり、また秋聲に親炙したというこの上もない強味もある。おのずからこの著作は研究評論がしばし陥りがちな無味乾燥から遠く、ふくらみのある面白いものになっている。

(吉行淳之介「野口さんの秋聲」- 『徳田秋声の文学』帯推薦文)


夕食を食べていると、ピンポーンと古本屋から荷物が届く。梱包を乱暴に引き裂いて、保昌正夫著書2冊、『近代日本文学随処随考』(双文社出版、1982年)と『13人の作家』(帖面舎、1990年)を取り出す。