文化生活一週間 #30

今週のおぼえ帳

今週のお出かけメモは特になし。出無精だと部屋でよく音楽を聴く、というわけで、埋め草に最近、よく聴くディスクのことを。

  • ベルリン響楽団を指揮するザンデルリンク

手持ちの宝物ディスクを10枚選ぶとすると、ベルリン交響楽団を指揮するザンデルリンク5枚組(ASIN:B00006L3X3)は絶対にはずすことができない。このボックスセットは1960年代と70年代の録音が主ななかで、唐突に2002年5月19日のザンデルリンクの引退コンサートが含まれているというもの。ブラームスのハイドン変奏曲、内田光子さんとの共演でモーツァルトの協奏曲 K.491、シューマンの交響曲第4番というプログラムとあいまって、そのコンサートのことを知ったときは胸が詰まってしかたがなくて、それからしばらく、手持ちのディスクで同じ曲目の MD をこしらえて何度も聴いては悦に入っていたものだった。というわけなので、翌年年末、深い考えもなく足をふみいれたタワーレコードで、ザンデルリンクの引退コンサートの実況録音を収めたディスクの存在を知ったときはまさしく夢のようだと思った。帰宅後は何も言わずにただザンデルリンクのラストコンサートに耳を傾けるのみ、ひとたび聴くと、何度も何度も聴いて、その後ずっと中毒状態だった。

以来、このディスクを聴くのは、2002年5月19日の実況部分だけというのがほとんどで、とりわけ最後の1枚、モーツァルトのピアノ協奏曲とシューマンの交響曲第4番ばかりを聴いていた。ある種の気分になったときは、深夜にブラームスのハイドン変奏曲に身をゆだねて、心穏やかに眠りにつく。

で、ひさしぶりにザンデルリンクのラストコンサートを聴きたい気分になったのであったが、今回はちょいと気まぐれで、ラストコンサートに入る前に、1960年代と70年代の録音の箇所、最初はブラームスと同じディスクに入っているベートーヴェン、シューベルト、ワーグナーを聴いてみたら、これまたぐっとしみ込んできて実にいいのだった。とりわけ、シューベルトの交響曲第2番に夢中。となると、他のディスクを聴いてみたいなと、オイストラフとの共演のプロコフィエフの協奏曲を聴いたり、ショスタコーヴィチの交響曲第10番を聴いたり。そういえば、わたしは前々からショスタコーヴィチの交響曲第10番が大好きで、この曲の魅力を知ったのは、ザンデルリンクのディスクを聴いたのがきっかけだったけと、かつての音楽聴きのことを懐かしく思い出したり。

なかなか梅雨が明けない。7月末なのにずいぶん涼しい夜が続いた。そんな日々、イヤホンで1960年代と70年代のザンデルリンクを聴きながら、お茶を飲んでいる時間はさながら、クラシック音楽を聴くようになったまなしの頃のようなのだった。当時買った、クライバーの《未完成》の余白に入っている、シューベルトの交響曲第3番に久々に夢中になったりもして、ここ数年ずっとピアノ曲と室内楽が音楽聴きの中心だったから、ひさびさにオーケストレーションの愉しみにワクワクしたりもしている。そして、クラシック音楽に夢中になったきっかけは、オーケストレーションのたのしみに取りつかれたことにあったのだったとハタと思う。