青年芸術派とサッカレーと濱田研吾と山下武を読む。

三連休が明けてみると、朝から雨降りで涼しい。起き抜け早々なにやら気がふさぐので、早々に外出して、せめてもの気晴らしに喫茶店で本を読む。大切にカヴァーに包んでご満悦の、借り出し中の『青年芸術派・新作短篇集1』(明石書房、昭和16年4月5日発行)を取り出し、今日は田宮虎彦の「春の日抄」と南川潤の「叙情」を読む。南川潤は以前は坂口安吾との関連でのみ名前を知っていただけだったけど、戸板康二と同時代の「三田派」ということで、ここ数年来は別の観点からそこはかとなく心にとまる存在となっている。その作品を読むのは『三田文学名作選』(http://www.mitabungaku.keio.ac.jp/meisakutop.htm)以来だったけど、井上立士とおなじく「都会的風俗小説」の極致というような作品で、戦後作品と決して遜色のない田宮虎彦の確かな筆致と早世の南川潤とを合わせて読んで、しみじみ感じ入る。残りの時間は、『虚栄の市』第2巻をズンズンと読み進める。


昼、力が出ないのでせめてもの気晴らしにコーヒーを飲むことにする。これまた大切にカヴァーに包んでご満悦の、濱田研吾『三國一朗の放送室』(私家版、2006年7月30日発行)を取り出す。連休中に一気読みするつもりが、途中、「京屋印刷」のくだりでふと「永井荷風私家版『墨東綺譚』事件」のことを思い出し、広瀬千香『続 私の荷風記』こつう豆本(日本古書通信社、1989年)やら竹下英一『岡鬼太郎伝』(青蛙房、1969年)やらを本棚から取り出して、寄り道してしまったのだった。読みさしの『三國一朗の放送室』をズンズンと読み進めて、時間になる。


夕刻、依然力が出ないので、早々に外に出る。京橋図書館のあと、タリーズでコーヒーを飲む。借りたばかりの山下武『幻の作家たち 消え去りし文学へ寄せるオマージュ』(冬樹社、1991年)を取り出す。中戸川吉二目当てで借り出したのだったけど、中戸川吉二と並んでサッカレーの章もあるので、ワオ! と大喜び。中戸川吉二とサッカレーの章をじっくりと読む。山下武が一番に推すサッカレー『ヘンリ・エズモンド』(翻訳は村上至孝訳のみ、同内容で『ヘンリ・エズモンド』『恋の未亡人』の二種類がいずれも昭和23年に刊行)の書名を手帳にメモ。


帰宅後、NDL の OPAC で検索すると、またもや本の友社より刊行の山下武監修の復刻版として、今度は「名作翻訳選集英米篇」(130000円+税)というのがあるのを知る。ラインナップは以下の通り。

    1. マーク・トウェイン/濱田政二郎訳『赤毛布外遊記(The innocents abroad)』上中下(新月社、昭和24年)
    2. チョーサー/刈田元司訳『恋のとりこ(Troilus and Criseyde)』(新月社、昭和23年)
    3. サッカレー/村上至孝訳『恋の未亡人(The history of Henry Esmond)』上中下(新月社、昭和23年)
    4. ウィラ・キャザー/高野彌一郎訳『フィラと奴隷娘(Sapphira and the slave girl)』(大観堂、昭和16年)
    5. H.G.ウェルズ/加藤朝鳥訳『ジヤンとピータア』(春秋社、大正15年)
    6. エリザベス・ギャスケル/北澤孝一訳『メァリ・バートン』上中下(日本評論社、昭和23年)


あとはもう寝るだけというひととき、サッカリー/中島賢二訳『虚栄の市』第2巻(岩波文庫)を読む。ページを繰る指がとまらない。それにしてもなんとおもしろいのでしょう!