『大東京繁昌記 山手篇』の上司小剣を読む。

朝からよい天気で気分がよい。ハイドンの弦楽四重奏を流して、さらに気分上々。今日も早くに外出して、喫茶店で本を読むとするかなと、昨夜読んでいた谷崎精二で思い出して、しばし本棚探索。平凡社ライブラリーの『大東京繁昌記 山手篇』を取り出す。「神保町辺」を谷崎精二が書いているのだ。この本は発売まなしにガバッと買ったのだけど、当時から一番のお気に入りは加能作次郎の「早稲田神楽坂」であったと追憶しながら目次を眺めていると、「目黒附近」を書いているのがなんと上司小剣なので、「えー!」と朝っぱらから思わず奇声を発してしまう。すっかり忘れていた…。こうしてはいられないとバタバタと身支度、イソイソと外出、喫茶店にたどり着いて、ふうっとひと息ついて、『大東京繁昌記 山手篇』を読む。

大東京繁昌記 山手篇 (平凡社ライブラリー)

上司小剣の「目黒附近」はすばらしかった。実はいままでずっと未読だった。いままでわたしはいったい…とうなだれるも、巻末の解説で坪内祐三が上司小剣の「目黒附近」について、《この一篇だけ、他の収録篇と、そのスタイルが違う。小説仕立になっている。そして、それゆえ、私は、今まで、この作品は未読でいた。》と書いているのを見て、にっこり。そして、《これがとても面白かった。震災後の、変わり行く東京の「郊外」の様相がヴィヴィッドに描かれている。面白いだけでなく資料、しかもそれは普通の歴史書にはなく、小説でしか語れない実感的な資料としても意味がある。…》云々と続くのを見て、フムフムとなる。

坪内祐三の解説のタイトルは「『東京』が読みたくなってきた」。上司小剣の『東京』2冊はちょっと前の五反田古書展で見たことがあった。パッと手に取っただけで、なんとも素敵な本で(石井鶴三装)、買ってしまおうかと思ったけど値札(10000円)を見てすぐに棚に戻した。当時の自分に「買っちゃえ、買っちゃえッ」と言ってやりたい。同時に、現在の自分に、あのときの五反田で買った尾崎一雄『あの日この日』全3冊を早く読みたまえと言ってあげた方がよいかもしれない…。

『大東京繁昌記 山手篇』をピンポイント式に読み返したあと、突発的に持参した宇野浩二『独断的作家論』(講談社文芸文庫)をこれまたピンポイント式に読み返す。