伊達得夫の『ユリイカ抄』を買い、矢野誠一さんの「晋と伸郎」を読む

日没後、マロニエ通りを歩いて、京橋図書館へ。途中、奥村書店1軒目に足を踏み入れる。買おうと思っていた戸板康二の本が棚から消えているのを確認したあとで、まあまたいずれと、ひととおり棚を眺める。しみじみいい眺めだなといつも思う。と、いい気分になったところで外に出て、昭和通りを横断、マロニエ通りの奥村2軒目「新生堂奥村」に足を踏み入れる。早く買いたいなと思っていた、平凡社ライブラリーの伊達得夫『詩人たち ユリイカ抄』が新品状態で売っていて狂喜乱舞、わーいわーいと即購入し、さらにいい気分になって外に出て、図書館へ向かった。


「ユリイカ」のことに心躍らせたのは、ごたぶんにもれず、長谷川郁夫著『われ発見せり 書肆ユリイカ・伊達得夫』(書肆山田、1992年)がきっかけだった。長谷川郁夫さんの名前は小沢書店の社主としておなじみだったけど、「三田文学」に堀口大学についての連載をしていて、「図書新聞」では長谷川巳之吉について書いているのを垣間見て、ますます心ときめかすこととなった。堀口大学、長谷川巳之吉という並びはそのまま戸板康二の『ぜいたく列伝』なので、それだけで心躍る。連載は全然フォローできていなくて、両方とも本になるのがひたすら待ち遠しいという感じ。……というようなことを思ったのは何年も前のことで、その長谷川郁夫さんの著作という理由だけで、『われ発見せり 書肆ユリイカ・伊達得夫』が気になり、書肆アクセスで売っているのを嬉々と買ったという次第だった。と、買ったのも実はだいぶ前で、実際に読んだのはたしか去年だったと思う。読了後すぐに、伊達得夫の『詩人たち ユリイカ抄』の元版を京橋図書館で借りた。ぜひとも入手したいと思ったもののなかなか機が熟さず買う機会がやってこないうちに、平凡社ライブラリーとして手にできた幸福を喜びたい。田中栞さんによる『書肆ユリイカの本』(紅梅堂)を手にして1年後、ジワリジワリと近づいていたのだなアと思うと嬉しい。と言いつつ、なかなか買わずにせこく半額で入手してわーい、という展開になってしまったのだけれども。


本日の京橋図書館は、予約していた庄野潤三著『世をへだてて』を借りるという用事のみ。早く帰宅してミルクティとともに、伊達得夫を眺めて、庄野潤三を繰ろうと思いつつも、しばし雑誌置き場を眺めた。ふと「悲劇喜劇」が目にとまる。いつもは閲覧すらしないのだけど、「いぶし銀の魅力」という特集名に惹かれて手にとると、矢野誠一さんが「晋と伸郎」という一文を寄せていたので、大興奮! 晋と伸郎! こうしてはいられないとこっそりコピーをとった。『世をへだてて』を引き取り、イソイソと外に出た。

帰りの地下鉄で、矢野誠一さんの「晋と伸郎」にホクホクと目を通した。山口瞳に会ったときに、脇役ばなしで盛り上がって、「ちょい役列伝」のようなものを書いてくださいと言われた、と冒頭にあった。ワオ! 矢野誠一著『ちょい役列伝』、今からでもぜひともお願いしたい! とますます興奮。と、ひとまずの矢野さんによる「ちょい役列伝」、龍岡晋と中村伸郎、なんと心ときめく並びであることだろう。

山口瞳の「ちょい役」ばなしは、『年金老人奮戦日記』の戸板康二の追悼文の箇所(1993年1月23日)で伺うことができる、のを、あとになって思い出した。


夜は予定通りに、庄野潤三の『世をへだてて』を大切に大切に読み進めた。福原麟太郎やチャールズ・ラムをもっともっと深く読みこむのを、わが本読みの大きなテーマのひとつにしたいと思う。