山野楽器でよろける

今日こそはバッハのクリスマス・オラトリオを聴き始めねばならぬと、朝っぱらからディスク棚を探索し、やっとのことで愛聴のバッハ・コレギウム・ジャパン盤を発見。おもむろに1枚目をターンテーブルに乗せて第1番を再生して冒頭のティンパニ連打のところが耳に入ったとたん、急にハイ。そうだった、そうだった、《クリスマス・オラトリオ》のはじまりはこのティンパニ連打なのだった、と、ただそれだけのことが嬉しくってたまらない。ああ、それにしても《クリスマス・オラトリオ》の音楽はなんと素敵なことだろう、こういうのを「愉悦」というのだろうなアと、いつまでもハイ。と、年末年始のわが年中行事、バッハの《クリスマス・オラトリオ》聴きにはしゃぐあまりに、外出がすっかり遅くなり、あわてる。

日没後、ちょいと時間がありそうだったので、銀座まで足をのばし、山野楽器3階のクラシック売場に突進する。ムターの新譜のモーツァルトは輸入盤はまだ店頭にないようだ、しばし待たねばならないと確認が終わったあとで、今日はダブルポイントデー(火曜日か水曜日)、先日下見しておいたディスクを満を持して購入するのだと目には炎がメラメラ、さア、今こそ欲しかったディスクをすべて手中に収めるといたしましょう! とひとり燃えたのだったが、ああ、なんということだろう。先日下見しておいたディスクがことごとく見当たらない、ウェストミンスターのクララ・ハスキルの3枚組(だったかな)が見つからない、フェリアーのブラームスが消えている、以下略、ああ、なんということだろうと、心の持って行き場がなくなり、ただよろけるばかりなのだった。と、よろけている合間に、ふとクレーメルのバッハの無伴奏のディスクが目に入った。「レコードアカデミー賞」という文字が添えてある。クレーメルはいつのまにかバッハの再録音をしていたのかと、すっかりクラシック情報に疎くなっているわが身を憂え、こんなことだから欲しいディスクも買えないのだと、しょんぼりと山野楽器を退散。今日の雪辱はいつの日か必ず果たしたいものであるが。と、山野楽器でいつまでもモンモンとなるあまり、無駄に時間が過ぎ行き、出るのが予定より遅くなり、息も絶え絶え。

そのあと、戸板康二生誕九十年を口実に、ワインを飲んで、やっと穏やかな心持ちになった。