生きる歓び

朝の喫茶店で、図書館で借りてきた「レコード芸術」11月号を眺める。目当てはムターのインタヴュウ。思い余って極寒のニューヨークに聴きに出かけてしまったほどにひところえらく夢中だったヴァイオリン奏者、インタヴュウ記事を目にするのはひさしぶり。ウムと、じっくりと目を通すと、強い意志に満ち満ちている聡明なところは変わることなく、向かうところ敵なし、という感じで、愛が再燃。しばらく強化するというモーツァルトはどんなふうになっているのだろう。ひとまずは自分の耳で聴くのがたのしみ。来年夏、1999年以来の待ちに待った来日公演があるのだという。ワオ! 来年は内田光子さんの演奏会もあるようだし、音楽方面にたのしみが目白押しだなと嬉しい。

と、雑誌をひととおり眺めたあと、週末の母と二人の京都行きのコースを練っていないまま前日の朝になってしまった、わたしはいつもこうなのだと、憂鬱になる。うーむ、どうしたものだろう。外出前に突発的に持参した、いつか100円で買ったカラーブックスの駒敏郎著『京都文学散歩』をやる気なく眺めはじめると、案外にもなかなかおもしろい。昭和41年発行のこの本、40年前の京都を眺めることになって、40年前の京都を文学散歩、という二重のたのしみがなかなかいい。加能作次郎の『世の中へ』が登場していて嬉しい。『世の中へ』のひんやりした静かな朝の京都の路地のことを鮮やかに思い出して、急に読み返したくなった。カラーブックスのビニールカヴァーが吉村公三郎の映画を見ているようなレトロ感を醸し出して、ウキウキ。100円でたしかな満足。同時に買った同じくカラーブックスの、大谷晃一著『大阪文学散歩』も部屋の書棚にまだあるはず。部屋の本棚もたのしみ目白押しだなあと嬉しい。


昼休み、イソイソと本屋さんへ。目当ての「栄養と料理」1月号をガバッと手にとって安心したあと、しばし雑誌を立ち読み。「群像」(だったかな)に西村賢太の文章が載っていて、フツフツと嬉しい。西村賢太の文章集が出版されたらよろこびいさんで買ってしまいそう。藤沢清造全集全七巻も購入する気満々なのであるが…。一刻も早く「栄養と料理」を眺めたいので、立ち読みもそこそこにコーヒーショップにかけこむ。「栄養と料理」は1月号と7月号の付録の献立カレンダーがかなりの逸品なのだけど、本誌もいつもながらにしみじみいい。眺めていると次第に生きる歓びのようなものが湧いてきて、いつもハイ。これほどまでに嬉しい雑誌はほかにない。890円で確かな満足。と、なにをそんなに「栄養と料理」に固執するのか自分でも謎なのだった。


夜ふけ、京都立案を適当に切り上げて、コピーの整理をする。「芸能」で三國一朗が奥野信太郎著『町恋いの記』の書評を書いているのを発見。戸板康二目当てのコピーだったので途中で誌面が切れていて無念。寝床でしばし『町恋いの記』を繰った。