奥村で本を買い、扶桑書房から本が届く

なんとか活動はしていたものの抜け殻状態の1日を過ごし、午後5時くらいにようやく「人間」に戻った。「人間」になるっていいなあ。ふだん当たり前なことがこんなにも嬉しいことだったとは、と、しみじみありがたき心地す。これからは日々感謝の心を忘れずに清く正しく生きようと思うのだった。

と言いつつもいつもの「喉元過ぎれば」の予感ヒシヒシのなか、いよいよ冬が本番かなというひんやりとしたマロニエ通りをズンズンと歩いて、まずは松屋裏の奥村をのぞく。今日棚にあったら縁だと思って買おうと思っていた、森岩雄宛献呈署名入りの戸板康二『いえの芸』がしっかりと棚にあって、やれ嬉しや、ジーンと手に取った。『いえの芸』はすでに持っていて読了済みなのだけれども、三國一朗の『肩書きのない名刺』を精読していた折、三國さん所有の徳川夢声『夢諦軒随筆』(昭和11年)、「森岩雄俳兄」と献呈先が記されている「徳川夢諦軒」署名入り本についての一文がいいな、いいなと思って、これを機にわたしもがぜん、森岩雄宛の戸板康二署名本が欲しくなったのだった。初めて見たとき衝動買いせずに、こうして機が熟して買うことになったのがよかった。森岩雄と夢声はいとう句会仲間だし、森岩雄と戸板康二だっていとう句会で顔を合わせているはずだ。「いとう句会」は日頃の一番の関心事だなといつも思う。何年か前に三國さんの蔵書が大量に出回ったことがあった。森岩雄献呈署名入りの夢声本、どこかに存在するのだろうなと思う。

昭和通りを渡って、新生堂奥村に足を踏み入れる。新品状態の講談社文芸文庫が約半額でずらっと並んでいるということがこのお店にはままあって、今日はまさしくその日であった。目論見どおりに小山清と杉本秀太郎が棚にあって、狂喜乱舞。ジーンと手に取った。昼休みの本屋さんでつつましく1冊ずつ買おうと思っていたけど、結局せこく手に入れることになってしまった。わーいと大喜び。

京橋図書館で本をわんさと借りて帰宅したところで、扶桑書房から本が届く。注文品は1冊だけ売り切れ(野口冨士男)。今回届いたのは、戸川秋骨『都会情景』(第一書房、昭和8年)、網野菊『花束』(雄鶏社、昭和23年)、八木義徳のエッセイ集『北風の言葉』(北洋社、1980年)、「三田文学」の折口信夫追悼号(昭和28年11月)、第一次「歌舞伎」100号《故三木竹二君追善号》(明治41年発行)といったところ。と、非常にわたくし好みのツボをついたラインナップ(自分で注文したので当たり前だけど)に満足満足。扶桑書房での大きなたのしみのひとつに「文学界」系の著書を少しずつ買い揃えるというのがあって、今回は戸川秋骨の第一書房本を買えた。いつも思うけど戸川秋骨の随筆集はまずはタイトルが大好き、「都会情景」、いいなと思う。全著書を少しずつ集めている網野菊さんに八木義徳、長年の懸案の「三田文学」の折口信夫を買うことができ、前々から手元に欲しかった三木竹二も買えて、今回は大収穫だわいと、機嫌よく払い込み用紙に住所氏名を記入。

その直後、署名入りの戸板康二『新劇史の人々』をちょうだいする。今日は戸板さんの署名本にはさまれた格好の、嬉しい本がわんさと手元に来た1日となった。明日から清く正しく静かに本を読もうと、思うのだった。もう師走。