満月の夜、内田誠の『落穂抄』と「銀座百点」が届く

朝の喫茶店で絲山秋子の『ニート』をおしまいの1篇まで一気読み。現役作家では今のところ、絲山秋子は全著書を読んでいる唯一の書き手なのだった。

昼休みの本屋さんで岩波新書の先月の新刊を見て、「あっ」となる。鴎外の翻訳について書かれた本、「図書」で刊行を知って以来たのしみにしていたのだけどすっかり忘れていた。近いうちに読んでみるとしよう。

夕食のあと葡萄をつまみながら焙じ茶をすすっていると、ピンポーンと郵便局の夜間配達。内田誠著『落穂抄』と「銀座百点」第237号(昭和49年8月)が届いた。

内田誠の『落穂抄 露伴先生に聞いた話』(青山書院、昭和23年)は長らくの探求本でやっと入手できて感激もひとしお。「日本の古本屋」でたびたび検索をかけている探求本というのがつねに数冊あって、そのうちの1冊に1年以上『落穂抄』は残ったままだった。いつからか、いつだってかすりもしなかったのが唐突に「落穂抄」でヒットするようになった。ギョッ! と、そのときが「日本の古本屋」にあきつ書店が参上しているのをみた最初であった。古書展で200円で売ってそうな造本だけどとんと見る機会がなかった本、やっと納得のいく価格で買うことができて嬉しい。内田誠が小石川の蝸牛庵に通いだしたのは昭和15年ごろだったという。『落穂抄』は昭和16年2月からの蝸牛庵における聞き書きメモを収録していて、戸板康二の『折口信夫坐談』に似た読み心地。戦争の影が色濃いという点でも共通していて、『落穂抄』を国会図書館で繰ったとき、久保田万太郎のつかいで内田誠が病臥している露伴に新しい下駄を届けるくだりがなんだか好きだった。その下駄が戦災で焼けてしまって、後日同じような下駄を幸田文が買いなおしたのだという。図書館で目にして一気に大好きだった本だけど、図書館だとどうしても卒読になってしまうので、このたびやっと入手できて、いつまでも大喜びなのだった。大切に繰っていくとしよう。

「銀座百点」第237号のお目当ては、「私の銀座コース」なるカラーグラビア(撮影:林忠彦)に登場の戸板康二先生! バー「クール」、新橋の「園」、吉井画廊、3丁目の奥村書店、吉兆を舞台にぎごちなく写真におさまる戸板さん。戸板ファン狂喜乱舞の逸品であった。