『続文楽の研究』の解説に感動する。

朝からさわやかな秋日和。イヤホンでシューベルトの弦楽四重奏《ロザムンデ》を聴きながら諸々の家事。空気が澄んでいるなアとズンズンと朝の坂道を下っているときの気分のよさといったらなかった。コーヒーを飲みながら「歌舞伎学会誌」に掲載の雲助師匠のお富与三郎の速記をなめるように熟読。いよいよ明日は待ちに待った鎌倉での雲助独演会。それぞれの登場人物の会話の応酬がどんなあんばいなのか想像しただけで胸が躍ってしかたがない。山田稔の『スカトロジア』を途中まで読んで時間になった。

今週も歌舞伎座の幕見席、『勧進帳』見物に行かれず無念なり。朝の気分のよさから一転、秋日和を通り越して晩秋のアンニュイな心持ちのなか、クサクサとトボトボと夜道の家路を歩いている途中、そうだ、岩波文庫の新刊が出ているやもしれない、と閉店になってしまう前に岩波ブックセンターへ行かねばと急に競歩を開始、ズンズンズンズンと岩波ブックセンターへ直進、なんとか閉店前に間に合った。お目当ての三宅周太郎『続文楽の研究』が売っていて、やれ嬉しや、競歩の甲斐があったわいと、同じくたのしみだった『コンラッド短篇集』も一緒に買おうと思ったけど、たのしみを分散させようと今日は岩波文庫は『続文楽の研究』だけとする。せっかく閉店前に間に合ったことだしとしばし売場を探索、昨日は気がつかなかった本がいろいろ目につくからおもしろい。あれこれ見たあげく、最後は「国文学解釈と鑑賞」2005年4月号《生誕百年石川達三の世界》を手に取り、本日のお買い物は計2冊なり。それだけで妙に達成感、一気に機嫌がよくなり、せっかくなのでコーヒーを飲んでゆくことにする。

『続文楽の研究』を手に取り、まっさきに児玉竜一さんの解説を熟読。何年も前から持っている書物の岩波文庫化の、なにがたのしみって実のところは解説が一番のたのしみなのであった。いざ目の当たりにしてみると、わたしは数年来こういう文章を読むのを待っていたのだ! という感じのすばらしさ。「三宅周太郎の文楽考現学」というタイトルからして冴えている! 文中には「戸板康二」の四文字も登場、2005年の「戸板康二」が登場する全記事で、圧倒的に一番嬉しい文章なのは確実! と、しつこく「!」を連発せずにはいられない。素敵にブリリアント! コーヒーそっちのけでなめるようにしつこく10回くらい読み返し、ひたすら嬉しくなっているうちに、喫茶店は閉店時間。

ズンズンと帰宅すると、早稲田の青空古本市の目録が届いていた。わーいとイソイソと家事を済ませて、ゆるりと眺めているうちに寝る時間になった。今夜もリヒテルのシューベルト。