映画メモ:7月と8月に見た映画

6月末日にフィルムセンターの豊田四郎特集で『風ふたたび』(目当ては龍岡晋)を見た。その前にほんの軽い気持ちで永井龍男の原作(「朝日新聞」の連載小説)を読むとするかなと図書館で探してみると、中央公論社刊の全集「日本の文学」の永井龍男と阿部知二が併録されている巻に『風ふたたび』があるのを発見、意気揚々と借り出し、これを機にひさびさに永井龍男強化月間と化して、それは梅雨明けまで続いた。おなじく豊田四郎監督の原節子出演映画に『冬の宿』がある。『風ふたたび』目当てで借りた「日本の文学」、同じ本で『冬の宿』も収録されているのも奇遇だった。けど、『冬の宿』の方は読み逃してしまったし映画も見逃してしまった。

そんなこんなの梅雨明けまでの永井龍男強化月間では、映画館からはちょいと足が遠のいた。戦後日本映画とその原作としての昭和文学、ということを思うのはいつもたのしい。で、思い出すのが五所平之助の『朝の波紋』。去年の秋、フィルムセンターの高峰秀子特集で見た映画で、原作は高見順。どうってことないには違いないのに妙に心に残っている映画で、原作を読みたいなあと急に思ったのだったけど、こちらはいまだ発見ならず。


で、約一ヶ月ぶりのスクリーン。

無声映画鑑賞会

  • フリッツ・ラング『メトロポリス』METRPPOLIS(1926年)/門仲天井ホール《第564回無声映画鑑賞会・第一回澤登翠一門会》

7月末、何年も前からそこはかとなく気になっていた無声映画鑑賞会に初めて出かけた。弁士つきで無声映画を見たのは以前にたった1度、数年前アテネフランセでルビッチの映画を見たときだった。語りは澤登翠で、ピアノトリオによる伴奏が添えられるという豪華なものだった。体験としては貴重だったけど、無声映画はサイレントで見る方が好きだなというのが当時の感想だった。見たのが外国映画だったせいもあろうし、当時、ルビッチや小津安二郎のサイレント(弁士なしでの)に夢中だったせいもあるかと思う。以来、弁士つきの映画見物にはあまり興味がなかったのだけれども、ここ2、3年で急激に話芸への関心が高まったことで、日本独特の文化としての「活動弁士」が面白いと思うようになった。

あまりにも有名な『メトロポリス』が未見だったこともあって、これはよい機会とイソイソと門前仲町へ出かけた。門前仲町の町並みがとてもよくて町歩きが心地よかった。上映は澤登翠門下の若手弁士3人がリレーで語ったあとで最後に澤登翠が締めるという方式。若手弁士のそれぞれの特色の違い(声優ふうだったり演劇ふうだったり)がモクモクと面白くて、全体を見通すとベテランの澤登さんよりも、むしろ若手弁士の方が発展途上ならではのところも含めてずっと面白かった気がする。映画も面白かった。「1920年代!」と海野弘的気分がたのし。ドイツ時代のルビッチ映画をもっと見たいなと、昔の自分の嗜好を思い出したのも一興だった。

当日の無声映画鑑賞会の概要は、

第一部:活弁映画史講座
映画伝来から弁士誕生まで、
翠センセーによる、すこぶる非常にためになる映画史をバラエティー仕立てでお送りします。

第二部:リレー活弁による『メトロポリス』
『メトロポリス』(1926年/ドイツ)〜映画史上に名高いSF大作の先駆〜
監督:フリッツ・ラング
脚本:テア・フォン・ハルボウ
出演:ブリギッテ・ヘルム、グスタフ・フレーリッヒほか

というもので、開演ギリギリに会場にたどり着いてみるとほぼ満席の大盛況。空席を探すのに一苦労だった。客層は老若男女揃っていて、やや「老」に偏っているかなというところ。「活弁」愛好家は多いらしい。


※マツダ映画社:http://www.infoasia.co.jp/subdir/matsuda.html


東京国立近代美術館フィルムセンター《発掘された映画たち2005》お出かけメモ

この夏の一番の興奮はフィルムセンターの《発掘された映画たち2005》であった。チラシを初めて見たときは「キャー!」と思わず声を上げてしまったくらい。いったい、わたしは何をそんなに興奮していたのだろう。見たい映画を手帳にメモしてさらにメラメラと燃えたのだったけど、いつもの通りに目当ての半分以上見逃すということに。しかし、なにがなんでも這ってでも見に行きたかった、初代吉右衛門の『熊谷陣屋』と『寺子屋』、夢声の語り付き映画は無事に見ることができたのでよかった、よかった。フィルムセンターは連日大盛況だった。


7月最後の土曜日の午後に出かけたのが『笑う地球に朝がくる』と『サザエさん』の二本立て。特に深い考えもなく見に来たのだったけど、なんとなく「なつかしい芸人たち」というようなことを思う。脱力感すらも味わい深い。思っていた以上に、満喫だった。見てよかった! といつまでも妙に心に残った。

笑う地球に朝がくる(42分・35mm・白黒・不完全)

地方を巡業する貧乏劇団に次々と降りかかる災難を描いた喜劇で、当時の芸人たちが特別出演している。本作を製作した南旺映画は、1933年に「映画国策樹立に関する建議案」を衆議院に提出して国家による映画統制を基礎づけた代議士岩瀬亮が1939年に設立した会社。『空想部落』(1939年)を皮切りに、『秀子の応援團長』(1940年)や『煉瓦女工』(1940年、公開は1946年)などを製作して1941年に東宝に吸収された。

1940(南旺映画)(監)津田不二夫、千葉泰樹(原)(脚)南せん子(撮)東健(音)杉井幸一(出)岸井明、東喜代駒、大竹タモツ、エデ・カンタ、中川辨公、楠本武志、三遊亭金馬、飯山茂雄、櫻川忠七、村山進一

サザエさん 七転八起の巻(53分・35mm・白黒)

1946年以降「夕刊フクニチ」や「朝日新聞」に連載された人気漫画「サザエさん」の映画化作品としては、東宝で製作された江利チエミ主演のシリーズ(計10作、1956-1961年)が有名であるが、本作は1948年に製作された初映画化作品。雑誌記者をしているサザエさんが、友人の妹の入院費を捻出するために奔走するという物語であるが、原作漫画をそのままなぞっているシーンもあり興味深い。服部良一が作曲した軽快なレビューシーンがふんだんに盛り込まれている。「マキノ映画」はマキノ眞三と宮城千賀子夫婦が1948年に設立した会社であるが、『桜御殿』(1948年)と本作を世に出すとすぐに解散した。(素材提供:プラネット映画資料図書館、復元作業:IMAGICAウェスト)

1948(マキノ映画)(監)荒井良平(原)長谷川町子(脚)京都伸夫(撮)藤井春美、平野好美(音)服部良一(出)東屋トン子、木野浩、宮城千賀子、滝沢静子、沢蘭子、服部富子、オリエ津坂、平野邦彦、小笠原マリ子、大伴千春、美川眞砂子、井上清


6月末日はフィルムセンターで『風ふたたび』を見たと思ったら、7月末日は吉右衛門の記録映画! と手帳に大きくメモしていて、午後1時からの『熊谷陣屋』と午後4時からの『寺子屋』を2本続けて見るというハードスケジュールを敢行。

記念に名取春仙の吉右衛門をここに貼りつけ。丸本映えのする男・吉右衛門、クーッ、かっこいい。戸板康二が脚本を書いたという『盛綱陣屋』の記録映画もいつかぜひとも見たいものである。

さて、7月末日の日曜日の午後、メラメラと気合十分のわたくしであった、と言いたいところだったけど、連日の深酒がたたり、いざ当日になってみると力が出ない。しかし今日を逃すとせっかくの吉右衛門を見逃してしまうしと、ヘロヘロとフィルムセンターに行くことになってしまった。ああ、こんなはずでは……。

満席の場内でまずは『熊谷陣屋』。映画が始まって、タイトルバックでさっそく大興奮、役者が一人ひとり役名とともに映し出されていくという派手な演出、心のなかで「キャー!」といつまでも大絶叫だった。と、一番興奮したのは実はこのタイトルバックだったかも。『熊谷陣屋』と『寺子屋』を比べてみると、あとに見たので疲れていたせいもあると思うけれど、吉右衛門の松王丸がいかにも精彩がなく、おやおやおや、という感じだった。2本続けて見て興味深かったのは、丸本を省略することなく演じられていることで、特に『熊谷陣屋』の相模の出のところが嬉しかった。映像的には、チラシの紹介文にあるように『熊谷陣屋』を写すカメラがとても面白く、東京劇場の内部建築を大スクリーンで見られたのもたいへん貴重だった。と言いつつも、2本続けて見て心にくっきりと刻まれたのは、とどのつまりは、若き日の歌右衛門の姿だったような気がする。とにかく超絶的に美しかった。

当初の目的は型の確認(の真似事)にあったのだけれども、ヘロヘロとしたなかで見たのでかなりぼんやりになってしまったのが無念で、ただ残ったのは、歌右衛門の美しさ、東京劇場の建築、『熊谷陣屋』のインパクト大のタイトルバック、となった。スクリーンで歌舞伎を見るのは、歌舞伎座で実際の上演を見るのより疲労度は数倍。視線が固定されてかなりの圧迫感。舞台は映像には収まらないし、過去の名優は映像では決して知ることはできない。これは「歌舞伎」ではなくて「記録」でしかないのだ、という至極当たり前のことを思って、その点でも脱力だった。それにしても、くたびれた。過去の歌舞伎は、劇評であれこれ思いを馳せる方がずっとたのしいなあと、わたしにとっての歌舞伎のたのしみは演劇書の方にあるのだなあと、自分の嗜好の再確認はできた。

一谷嫩軍記(107分・35mm・パートカラー)

東京劇場を1950年1月28日と29日の2日間借り切り、初代中村吉右衛門(1886-1954)の当たり狂言「熊谷陣屋」を撮影した記録映画(撮影前日までは17世中村勘三郎の襲名披露興行が同劇場で行われていた)。マキノ正博が監督、岡崎宏三等がキャメラを担当しており、キャメラ8台(9台という記録もある)を操作しながら同時録音で撮影された。タイトルバックと見せ場のワンシーンのみカラー映像になる。使用されたフィルムは翌年1951年に公開される初の長篇カラー作品『カルメン故郷に帰る』で本格的に用いられたリバーサル方式の「フジカラー」である。(素材提供:川喜多記念映画文化財団、復元作業:育映社、IMAGICA)

1950(プレミアピクチュア)(監)マキノ正博(原)並木宗輔 他(撮)岡崎宏三 他(出)中村吉右衛門、中村芝翫、松本幸四郎、中村勘三郎、澤村訥升、中村又五郎、中村吉之丞

『寺子屋』の上映の前に『歌麿』。監修者・邦枝完二の持ち味はどのあたりに発揮されていたのかな。

歌麿(14分・35mm・カラー)

浮世絵師・喜多川歌麿(1753-1806)の繊細な技法を解き明かしてゆく記録映画で、小西六写真工業が開発したリバーサル方式のさくらカラー・フィルムを使用している。監修に時代小説家の邦枝完二、考証指導に浮世絵研究家の吉田暎二、浮世絵の実技指導に太田雅光があたっている。本作には当時の日本映画では珍しいあからさまな女性の裸体描写が含まれているが、これらのシーンは当然ながら映倫審査で問題視され、「髪すきの女の乳房露出場面」などの削除が実行されたと審査記録に記述されている(しかし本プリントにはなぜかそれらのシーンがすべて残っている)。(素材提供:川喜多記念映画文化財団、復元作業:IMAGICA)

1952(秀映社)(監)住田暎介(撮)山田耕造

菅原伝授手習鑑(88分・35mm・パートカラー)

マキノ正博が『一谷嫩軍記』に引き続き中村吉右衛門後援会の依頼で監督した初代中村吉右衛門の記録映画。1950年5月27日に名古屋御園座で吉右衛門一座が公演していた「寺子屋」を撮影している。マキノ正博の回想によると、富士フィルムからフジカラー・フィルムの試作品3000フィートが提供され、ライティングに苦労しながら撮影したという。(素材提供:川喜多記念映画文化財団、復元作業:育映社、IMAGICA)

1950(プレミアピクチュア)(監)マキノ正博(原)竹田出雲 他(撮)飯野博三郎、宮西良太郎(出)中村吉右衛門、中村芝翫、松本幸四郎、澤村訥升、中村又五郎、中村吉之丞、市川染五郎、中村萬之助


夏休み初日はフィルムセンターで夢声! 行列に加わるべくずいぶん早くに出かけて気合十分。それでも先客はいるのだった。前に並んでいた老紳士に『日本のいちばん長い日』の DVD を自慢される。25年前から通っているからお嬢さんの生まれる前だよ、とも言われる(実はとっくに生まれている)。開場してロビーに入ると、この老紳士は「先生!」と呼ばれているのだった。いったい、どなただったのでしょう。まあ、どうでもいいけど。

「徳川夢声という名前は、その字づらだけで胸がときめくようなある種の誘惑に通ずるものがある by 戸板康二」というわけで、徳川夢声の名前がクレジットされているというだけで、深い考えもなく見に来たのだったけど、これも思っていた以上に満喫。いいものを見た、いや、珍奇なものを見たというべきか、とにかくも「見てよかった!」とヒクヒクだった。

海魔陸を行く(53分・35mm・白黒)

漁師に生け捕られた蛸が酢ダコにされる直前に蛸壺から脱出し、さまざまな天敵に遭遇しながらも故郷の海を目指すという荒唐無稽な実写映画で、徳川夢声が蛸の声を担当している。カマキリ、蜘蛛、蛇、ウツボなどの生態を超クロースアップで捉えたシーンは科学映画としても楽しめる。ラジオ映画は1947年から1953年ごろまで存在した会社。戦時下に『病院船』(1940年)を監督し、戦後の『白い山脈』(1957年)でカンヌ映画祭の賞を受賞した今村貞雄が代表を、さらに小津の初期作品のキャメラマン茂原英雄が監査をつとめている。本プリントはタイトル・クレジット部分のほか、数箇所のシーンが欠落している。(素材提供:プラネット映画資料図書館、復元作業:IMAGICAウェスト)

1950(ラジオ映画)(監)伊賀山正徳(原)今村貞雄(脚)松永六郎(撮)福田寅次郎(音)伊藤宣二(出)徳川夢声

夢声絶好調! のタコ映画のあとは中国のアニメーション。

鉄扇公主(西遊記 鐡扇公主の巻)[日本語吹替版](65分・35mm・白黒)

中国におけるアニメーション映画の創始者・萬兄弟が1941年に製作したアジア初の長篇アニメーションで、孫悟空、沙悟浄、猪八戒が三蔵法師を守りながら鉄扇姫や牛魔王と戦う大活劇。監督の萬籟鳴と萬古蟾はディズニーの『白雪姫』(1937年)に衝撃を受けて長篇アニメの製作に乗り出したという。中国映画界の辣腕プロデューサー張善?が企画し、厳選された100名近いスタッフが2年間の歳月をかけて製作した。今回発見されたのは1942年に日本で公開された日本語吹替版であり、徳川夢声が日本語版の演出を担当している。本作は手塚治虫が少年時代に大きな影響を受けた作品としても知られており、漫画「ぼくはそんごくう」(1952-1959年)や東映の長篇アニメ『西遊記』(1960年)へとつながっていった。(素材提供:川喜多記念映画文化財団、復元作業:IMAGICA)

1941(中華聯合製片公司)(監)萬籟鳴、萬古蟾(原)(脚)王乾白(撮)劉度共、陳正發(出)徳川夢声、山野一郎、牧野周一、丸山章治、松井美明、水谷正夫、荒井雅吾、月野道代、小野松枝、神田千鶴子

アニメーションに不慣れのせいか、ひどく疲れてしまったけど、夢声門下の弁士出演とのことで、見た価値は大いにあり。興にのったのか、映画のあとは、浅草の弁士塚(参照:http://www.asakusa-sanpo.com/asak_13.html)へお出かけ。


※東京国立近代美術館フィルムセンター:http://www.momat.go.jp/FC/fc.html


夢声の広島


夏休み初日はフィルムセンターで夢声、2日目は歌舞伎座で三津五郎、のその前に川崎へお出かけ。奇しくも二日連続の「夢声」映画見物となった。

  • 『平和記念都市 ひろしま』/川崎市民ミュージアム《戦後60年特別上映》

約20分の完成版のあとに約10分の断片を合わせて上映、のその前に館の方のごあいさつがあった(夢声に関してはひとことも触れず)。戸板康二が編集していた「日本演劇」に丸山定夫の記念碑を設立するにあたっての(だったかな)夢声の文章が載っていたのを帰りのバスで思い出した。

内外映画社/1954年/白黒/スタンダード/35mm/30分
脚本・監督:秋元憲●撮影:鈴木隆一+井上莞+三浦光雄●音楽:大木正夫●語り:徳川夢声


※川崎市民ミュージアム:http://home.catv.ne.jp/hh/kcm/


新文芸坐「戦後60年企画第5弾 その時代を検証する」お出かけメモ

敗戦記念日の夜は新文芸坐で『また逢う日まで』。岡田英次の語りが新劇調で当初はちょっとくさいかなと思ったけど、登場する建築が洋館だったりと美術も新劇調で目にたのしかった。白黒映像が美しかった。あとで、川本三郎さんの『今ひとたびの戦後日本映画』(ISBN:412203650X)のことを思い出した。まさしく『また逢う日まで』は川本三郎さん言うところの、典型的「戦後日本映画」。この本で大きく取り上げられているのをじっくり読んで、見ているときは決して面白がっていたわけではないのだけど、見ておくべき映画だった、見てよかったとしみじみ思った。映画全体にただよう独特の古風さが野上弥生子の戦前小説を彷彿とさせたのだけれども、それは水木洋子が脚本を書いているということからきているのかも。ある種の「インテリ女性」「お嬢さん」趣味的なものが通底していて、その独特の潔癖さのようなものににちょっと惹かれるものがある。岡田英次や芥川比呂志らの、旧制高校的ムードもよかった。滝沢修と杉村春子のラストシーンで、主役は実はこのふたりだったのかもと思う。滝沢の聖徳太子のような法曹服姿に思わずクスクス、ツボだった。「墨をすれ!」(だったかな)のシーンもグッド。

濃い二本立てを見てしまった。『人間の壁』はせっかくの石川達三の映画化なのに、原作読みが間に合わず無念だった。香川京子と宇野重吉がぴったりのキャスティング。殿山泰司と伊藤雄之助が一瞬登場するシーンでは場内から笑い声、わたしもヒクヒクだった。『白い巨塔』では実は主役は滝沢修というくらいに滝沢大活躍!

山村聰の映画を見たのはたぶん初めて。たいへんわたくし好みの映画で、山村聰の美意識というか男気のようなものがとてもよかった。じんわりじっくり大満喫だった。こちらでも滝沢大活躍! 終始いい上司でありながらも時折冷徹なところを見せる、というような微妙さが絶妙だった。津島恵子がとてもよかった。市川崑『女性に関する十二章』、大庭秀雄『帰郷』と合わせて、わたしのなかの「津島恵子映画御三家」としたい。


※新文芸坐:http://www.shin-bungeiza.com/


ラピュタ阿佐ヶ谷お出かけメモ

  • 『南の島に雪が降る』/ラピュタ阿佐ヶ谷《戦後60年記念企画 八月十五日、その日まで。》

本特集では『日本のいちばん長い日』を見逃してしまって無念だったけど、広島原爆記念日に『南の島に雪が降る』を見ることができたのはよかった。加東大介の原作は大の愛読書だけど、映画そのものは実はそんなには期待していなかった。けど、ことのほかなかなかおもしろくて、もともと期待していなかった分、その佳品ぶりが嬉しかった。フランキーがピアノを弾くシーンなど、登場する役者のその一瞬一瞬を満喫、という感じの「脇役」名作映画。山茶花究が出演していれば完璧だった。有島一郎が心に残った。

1961年(S36)/東京映画/カラー/104分
■監督:久松静児/脚本:笠原良三/原作:加東大介/撮影:黒田徳三/美術:小島基司
■出演:加東大介、伴淳三郎、有島一郎、西村晃、大江俊輔、佐原健二、和田孝、渥美清

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太平洋戦争下の西部ニューギニア。衰弱した兵士たちに希望を与えようと、杉山大尉は演芸班を組織することにした。各部隊から芸達者が集い、旗揚げ公演にむけて一同奮闘する…。加東大介の同名体験記の映画化。(チラシ紹介より)

  • 五所平之助『「通夜の客」より わが愛』/ラピュタ阿佐ヶ谷《昭和の銀幕に輝くヒロイン 第22弾 有馬稲子》

山村聰の『黒い潮』に引き続いての井上靖原作映画。井上靖の映画化というと、増村保造『氷壁』とか川島雄三『あした来る人』などがまっさきに思い浮かぶ。ほかにもまだまだあるような気がする。検索してみたら、井上靖の映画化作品一覧表があった(→http://www.fukido.co.jp/inoue/eigaka.html)。多謝多謝。8月最後に見た映画は井上靖の原作で、6月最後に見たのは永井龍男の原作。戦後日本映画とその原作としての昭和文学、というのはやっぱりたのしい! と、2ヶ月ぶりに奇しくも同じことを思うこととなった。

1960年(S35)/松竹京都/カラー/97分
■監督:五所平之助/脚本:八住利雄/原作:井上靖/撮影:竹野治夫/美術:平川透徹/音楽:芥川也寸志
■出演:佐分利信、丹阿弥谷津子、乙羽信子、関千恵子、浦辺粂子、河野秋武

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ある秋の夜、通夜の席に現れた見知らぬ女性。彼女の回想から悲痛な愛の軌跡が明らかになる…。井上靖の小説『通夜の客』の映画化で、妻子ある中年男にすべてをささげた娘の激しく、ひたむきな愛情を描く。 (チラシ紹介より)


※ラピュタ阿佐ヶ谷:http://www.laputa-jp.com/