奥村書店と歌舞伎座

先月末に九段会館屋上のビアガーデンにて開催のNの会(仮称)で金子さん(id:kanetaku さん)と同席した際にちょろっと、来月の歌舞伎はいがかでしょう、という話になった。なんといっても三津五郎の『伊勢音頭』がたのしみでたのしみでしかたがない、三津五郎の『伊勢音頭』と聞くと当然たのしみにしてしかるべきの『法界坊』なぞすっかりかすんでしまった、勘三郎も『伊勢音頭』の万野の方がずっとたのしみ、そういえば五月の『髪結新三』だって主役は勘三郎じゃなくて三津五郎だったし、とにかく八月の歌舞伎座は『伊勢音頭』がたーのーしーみー、と大いに盛り上がった(若干の脚色含む)。そして、よくよく確認すると、8月の歌舞伎座について意見の一致をみたばかりでなく、金子さんとは、観覧日まで同日で席種まで同種(3階B席)ということが判明、奇遇にびっくりだった。


そんなこんなで、金子さんより、本日のいただきもの。

  • 林えり子『仮装 男装の麗人川島芳子』(集英社文庫、1989年)

自サイトの戸板康二ダイジェスト(http://www.ne.jp/asahi/toita/yasuji/)にて作成中(と言いつつ1年以上更新が頓挫)の「戸板康二解説の文庫本を探せ!」に新たな1冊が追加で、こんなに嬉しいことはない。林えり子さんの文庫本を見かけるたびに「もしや」とチェックしていたけれど、この本は見たことがなかった。

文庫本の解説というと、林えり子の文庫本に戸板康二が解説を寄せているのとおなじように、戸板康二の文庫本に林えり子が解説を寄せている、といったような「交換解説」リストのようなものを頭に思い描くことで文学者の交友をみる、といったようなたのしみがある。

ちなみに、林えり子さんが解説を寄せている戸板康二の文庫本は『見た芝居・読んだ本』(文春文庫、1988年)。


で、思い出すのが、

  • 酒巻寿(聞き書き・尾崎左永子) 『おてんば歳時記』(草思社、1979年)

こちらは、先月のNの会にて、森茉莉街道をゆく(http://blog.livedoor.jp/chiwami403/)のちわみさんから、戸板康二の本に登場していた1冊ということでいただいたもの。「明治大正東京・山ノ手・女の暮らし」という副題がたまらない。

某月某日/俳優座に行った時、筋向うの古書店で買って来た『おてんば歳時記』を拾い読みする。ぼくより十九歳上の老女の回想記で、明治の東京山ので少女期をすごした酒巻寿さんの二度目の母というのが、半井桃水の実妹だったという。……【戸板康二『見た芝居・読んだ本』より(「小説新潮」昭和56年8月初出)】

さすがはちわみさんのナイスな1冊に感動、であった。もうひとつの書物ブログもいたくナイスでごんすで、ますますちわみさんのファンのわたくし、であった。→ ねこそぎ記念:http://blog.goo.ne.jp/chiwami403/


ちなみに、先月のNの会では金子さんからは、ずっと探していた本、

  • 都筑道夫『目と耳と舌の冒険』(晶文社、1974年)

をちょうだいしている、のであった。こちらも、こんなに嬉しいことはない、の一言だった。参考:id:kanetaku:20050218


更新メモ

  1. 戸板康二ダイジェストにお遊びで三周年のご挨拶。
  2. 『劇書ノート』補遺 - ロッパの武智鉄二評の抜き書きファイル作成。

先月、書肆アクセスで『肥田せんせぃのなにわ学』(http://www.inax.co.jp/Culture/details/details.php?seq=832)を立ち読みしていたら、横山重著『書物捜索』正続(角川書店、1978-79)のくだりに「おっ」となって、目が釘付け。横山重というと、戸板康二の回想録に折口信夫がらみでなかなか微妙な登場のしかたをする人物、ということで覚えていただけなのだけれども、肥田晧三によると『書物捜索』という本はそれはそれはすごいのだそうだ。それはそれはすごい『書物捜索』正続は、前半は「三田文学」、後半は「新文明」に長らく連載されていたのだそう。と、ここ数年の大きな関心事項、和木清三郎の戦後の雑誌「新文明」が登場したので「おっ」であった。と、軽い気持ちで図書館で『書物捜索』正続を借り出してみたら、突然夢中。ひとたび繰ってみるととたんにこの書物を手中に収めたくてたまらなくなってしまう呪縛度という点において、去年に入手した武智鉄二『かりの翅』と双璧だった。しかし、検索すると、『書物捜索』正続は、『かりの翅』のときとは違って価格がどこでも高くて、『かりの翅』のときみたいにすぐには入手というわけにはいかなかった。

とかなんとか、「新文明」がらみではいつも興奮続き、図書館で眺めていた「新文明」で、古川緑波による武智鉄二評を発見したときも狂喜乱舞だった。


奥村書店にて

『伊勢音頭』見物にそなえて、わが長年の愛読書、志野葉太郎著『歌舞伎 型の伝承』(http://www.engeki.co.jp/shoseki/densyo.html)をめくったところ、《お紺の愛想づかしは沈痛な台詞廻し、哀しみを内に押えた肚芸の点で六世梅幸を超えるものはまだみないが、その梅幸の口伝は「梅の下風」に詳しいから省略するとして……》のくだりがあって、ムラムラとわが長年の懸案の『女形の芸談』購入を決意。歌舞伎座に向かう途中の奥村で探索、すぐに発見、すぐに購入。と、歌舞伎座での観劇とセットの演劇書購入はいつもとても嬉しいのだった。こういうのはひさしぶり、のような気がする。演劇出版社版『女形の芸談』は、『梅の下風』(法木書店、昭和5年)と『女形の事』(主婦の友社、昭和19年)を1冊にまとめたものなのでお得感たっぷり。でも、『梅の下風』初版の風情も素敵で、いつか欲しいのであった。

芝居見物

  • 八月納涼歌舞伎『伊勢音頭』『蝶の道行』『京人形』/ 歌舞伎座・第二部