連休日記:コーヒーと散歩

先月末、本多劇場へ阿佐ヶ谷スパイダースを見に出かけた日のこと。中途半端に時間が空いてしまい、日没後の駅周辺をツンとした冷気のなか、ところどころのお店を眺めたりしつつ、ふらふらと散歩した。そうこうしているうちにそこはかとなくいい気分に。かつては何年も井の頭線を使っていたので、下北沢というだけでなんとなく懐かしいなあ! と急に機嫌がよくなった。路地にお店がひしめいていて楽しいなあ! と、さらに上機嫌になったところで、待ちあわせの時間が刻一刻と迫ってきたので、イソイソと劇場に向かおうとしたまさにそのとき、とある喫茶店の看板が目にとまった。2階にあるそのお店、貼ってあった案内によると、山村聰伝授の方法で煎れたコーヒーをサーヴしているとのこと。コーヒーにこだわりのあった山村聰のコーヒーがいまもここに受け継がれている、らしい。と、ここで頭のなかは一気に、今年1月に刊行の濱田研吾さんの『脇役本』における「竿にもコーヒーにもこだわります」の山村聰、え〜! とたいそう胸が躍ってしまい、今すぐに山村聰のコーヒーを飲みたいッと思ったものの、本多劇場へ行かねばならなかったのでその日は断念。次回の下北沢行きがたのしみだなあ! と、嬉しくてヒクヒクだった。とにかくも、平成の世の路上でいきなり遭遇の「山村聰」という文字はインパクト大であった。


などと、前置きが長いけれども、よいお天気でたいへん愉快だった三連休の初日、ひょんななりゆきで下北沢に立ち寄ることになって、やれ嬉しや、だった。せっかくやって来たのだから行かねばなるまいと、勇気を出して山村聰のコーヒーが飲める喫茶店へ。そして、いざ店内に入ってみると、しみじみよい雰囲気の素敵な喫茶店で感激だった。「下北沢」という文字にただよう上質のものがそのまま空間化されているという印象。嬉しいあまり、なかなか立ち去り難く、日没までのんびりくつろいだ。ふだんはお店の名前を覚えるのが異様に遅いのだけれども、今回はきっちり心に刻んでおこうと、帰るときは「タス・ヴァリエ」という名前を呪文のように唱えた(心のなかで)。わりかし夜遅くまでやっているので、これから映画館とか劇場のあとに行けると思うと嬉しい。


連休二日目は川越へ。《清親と安治》展目当てで出かけた川越だったけれども、観光気分満喫で美術館以外もずいぶん楽しかった。散々歩きまわったあげくに、最後は教えてもらった喫茶店でひとやすみ。これまた、しみじみいい喫茶店で感激。川越へ来たらまた行けると思うと嬉しい。「あぶり珈琲」という名前を心に刻んだ。


最終日は、青い青い空の下を遠足、と言っても、単なる皇居一周。大混雑の東京ステーションギャラリーを見物したりしつつ、最後は神保町。いつもよく行くおなじみの喫茶店で飲むコーヒーがしみじみ美味しかった。

展覧会メモ

  • 近代錦絵の光芒 清親と安治 / 川越市立美術館 *1
  • 田中屋美術館 *2
  • 無言館 遺された絵画展 / 東京ステーションギャラリー *3

購入本

  • 展覧会図録『近代錦絵の光芒 清親と安治』(川越市立美術館、2005年)