資生堂で香水壜を買う

夕刻、銀座での時間がちょっと空いたので、ふらっと HOUSE OF SHISEIDO へ行った。ジャック・アンリ・ラルティーグの写真展を見物。ほんの気まぐれに見たのだけれど、思いのほか満喫。当時のビーズバッグと合わせての展示で、そんな持ち物と合わさることで、1910年代のパリ写真にうつる女のひとたちの姿を眺めるのがさらにほんわかと心地よかった。どの写真も通底する日常の一瞬がとても素敵だった。それから、いつもながらにたのしいのが、資生堂にまつわる展示で、初代社長とその弟「光の写真家 福原信三・路草」コーナーにはいつもうっとり。福原路草の、1938年の「やかん」という写真がとりわけ好きだった。手持ちの岩波の『日本の写真家3 福原信三と福原路草』(ISBN:4000083430)では見たことのない写真。ライブラリーコーナーであらためて二人の写真集を眺めた。(→ 福原信三 路草 写真展:https://www.shiseido.co.jp/s9704sin/html/sin00001.htm


そもそも、HOUSE OF SHISEIDO にやって来たのは展覧会よりも、実はほかの目的があった。

新年早々、id:antsuru さん経由で原田治さんがはてなダイアリーを始められたことを知って大喜びだった(id:osamuharada)。

「原田治ノート」の「小村雪岱の香水壜(id:osamuharada:20050111)」にて、HOUSE OF SHISEIDO で雪岱デザインの香水壜の複製が記念に作られて販売もされていることのをおくればせながら知った。まあ! と、書棚を写した美しい写真をいつまでも眺めていつまでもうっとり。感激のあまり、わたしもがぜん真似したくなってしまった、というわけで、HOUSE OF SHISEIDO へ行ったのは香水壜を買うためなのだった。念願の小村雪岱の香水壜、無事購入。6500円也。嬉しい。

――昔、懐かしい、銀座の
と、うたう、その声は明るい。
が、柳という木は、本来、暗い、寂しい、もの思いをいのちにこめた木である。そして、その、暗い、哀しい、もの思いをいのちにこめた木であればこそ、街路樹として、嘗ての……半世紀をこえる以前の銀座通りと呼吸をあわせることができたのである。……それほど、そもそも、銀座というところは、にぎやかだったのは尾張町の界隈、すこしのあいだのところだけで、竹川町、出雲町と、新橋にちかづくにつれ、ときによっては、人通りさえ途切れた位の、そうした、しづかな、寂しい、しめやかな東京での大通りだったのである。
そして、じつに、福原路草は、そうした銀座の生んだ典型的な“銀座人”だったのである。……これがいいたいばかりに、ぼくは、この一文を草したのである。
(久保田万太郎「福原路草のこと」)

展覧会メモ

  • 「リュクス」のかおり ヴィンテージ・ビーズバッグとラルティーグ写真展 / HOUSE OF SHISEIDO *1