雪の日

朝目が覚めてからしばし寝床でうつらうつらバッハを聴いた。このところとりつかれたように無伴奏ヴァイオリンばかりを聴いている。今聴いているのは手持ちのクレーメル。近いうちにシゲティかエネスコのディスクを入手したいなあ、というようなことを思ったあとで、えいっと起床。窓の外を見ると見事に雪が降っていてわっと驚いた。前々から今日は自転車に乗って神保町へ行こうと心に決めていて、その神保町納めだけを楽しみに師走の日々を乗り切ったといってもよいくらいだったというのに、ああ、無念なり…。しかし、石油ストーブであたたまった部屋で窓の外を雪を見ながら過ごすのはいいものだなあと上機嫌。ミルクティを飲みながらカーゾンのディスクでモーツァルトの《戴冠式》を聴いて、3月のサントリーホールの内田光子さんを思い出してジーンとなった。

お昼過ぎから、怒濤の勢いで本棚の整理。すっきりと完了して爽快だった。そんなには飽和状態になっていない、まだまだ大丈夫ということがわかってモクモクと生きる歓びが湧いてきた。と、心持ちよくポリーニのドビュッシーの《12の練習曲》を聴きながらひと休みしているうちに、やっぱり神保町へ行こうかしらという気になってきた。ちょいと本を見たあとで、コーヒーを飲みながら本を読むとするかなと身仕度しようとしたまさにそのとき、ピンポーンとお届けものが到着。

忘れかけたころに届いたのは本の詰まった段ボール箱で、こんなことがいつまで続くのだろうと思いながらも10年以上続いている年末の恒例行事が、家族からの「欲しい本を思う存分」というプレゼント。以前はとっておきの本をこの機会に、という感じだったのが、最近は買い損ねていた本をまとめて、というふうになってしまっている。とにもかくにもわーいわーいと梱包をひきちぎった。『小沼丹全集第3巻』、『旅は驢馬をつれて』、坪内祐三『文庫本福袋』、『ナボコフ=ウィルソン往復書簡集』、『新訂増補 歌舞伎事典』、洋書4点、以下略と中身はこんな感じで、わーいわーいとまっさきに読み始めたのは坪内さんの『文庫本福袋』。まっさきに開いたのは戸板康二『続歌舞伎への招待』(岩波現代文庫)。2004年冒頭が都筑道夫『女を逃すな』、仲田定之助『明治商売往来』、『水曜日は狐の書評』という並びになっているのにもびっくり。

というわけで、神保町は年明けのたのしみにすることにして、エスプレッソ片手に『文庫本福袋』をホクホクと一気読み。多川精一『戦争のグラフィズム―「FRONT」を創った人々』(平凡社ライブラリー)をやっぱり買いに行かねばと思ったり、富岡多恵子『漫才作者 秋田實』(平凡社ライブラリー)が欲しいッ、尾崎紅葉『多情多恨』(岩波文庫)を読まねばッ、以下略、などと心に刻んだことが多々あり。今日のところは整理したばかりの本棚からいろいろ取り出して、まずは斎藤緑雨のところしか読んでいなかった松本清張『文豪』(文春文庫)を読了したあとで、正宗白鳥や宇野浩二の講談社文芸文庫を読み返した。そんなこんなで一日が終わり、夜は矢田津世子『神楽坂 茶粥の記』(講談社文芸文庫)を再読、そんなこんなでとっぷりと夜がふけた。