散歩日記:目白と早稲田

青い青い空の下、正午過ぎに目白へ。絵本の古本屋さんで本を見て、並びの古道具坂田のたたずまいにうっとりし、エーグルドゥースでケーク・オ・フィグという焼き菓子(好物)を買ったあと、mon Sakata と並びの雑貨やをみて、道路を渡ってルート・ドゥ・ショコラでチョコレートを少々買った。買い物はたのし。通りがかりのコーヒー屋に長居の昼下がりだった。高田馬場駅に出た頃は日没直前。

さて、ここからが本番(何の?)。先月、岩波の新大系を安く入手したことに味をしめて、前々から手元においておきたいと思っていた、旧大系の『歌舞伎十八番集』と新大系の『上方歌舞伎集』のどちらか1冊をぜひとも本日入手するのだ! と闘志がメラメラ、隣駅の早稲田まで歩きがてら古本屋街を流すべく、ズンズンと歩を進めていったのだった。


購入本

本日の目的は岩波の日本古典文学大系のみであったので、いろいろと立ち寄りつつも邪念を振り払ってズンズンと歩いていった。そんななか、とあるお店に何年ぶりかで足を踏み入れた。以前、杉贋阿弥の『舞台観察手引草』を安く買った思い出のお店である。

  • 日本古典文学大系『歌舞伎十八番集』(岩波書店、昭和40年)

と、ここで長らくの念願だった郡司正勝校注の『歌舞伎十八番集』を発見。値段をチェックすると800円、予算以内だ、わーいと嬉々と買った。打てば響く早稲田、目論み通りに入手できて嬉しい。先日、新大系の『江戸歌舞伎集』所収の元禄歌舞伎の絵入り狂言本を読んでいたら、ますます『歌舞伎十八番集』が欲しくなっていたところだったので、本当に嬉しい。旧大系の第二期には『文楽浄瑠璃集』があり、こちらは3年ほど前に入手して以来の愛読書。やはり800円で買ったのだけれど、痒いところに手が届く実にすばらしい本。いずれも昭和40年の刊行で、いずれも戸板康二が「芸能」という雑誌で書評を書いていて、その画期的な仕事に賛辞を呈していたのだった。この『歌舞伎十八番集』には『役者論語』も収録されているというのが嬉しいかぎり。岩波文庫でも出ているのであるが、こういう本の巻末に入っているとさらに気分が盛り上がるのだった。少しずつ読んでいくのが本当にたのしみな一冊。それにしても安上がりな道楽だなあ。


『上方歌舞伎集』か『歌舞伎十八番集』のどちらかを入手するという本日の目的は見事に達成できた。『歌舞伎十八番集』を買って一安心、先ほどの「ズンズン」とうってかわって、今度はのんびりと通りがかりの古本屋さんと次々とのぞいていった。

  • 安藤鶴夫『歳月』(講談社文芸文庫、2003年)
  • ディケンズ/藤岡啓介訳『ボズのスケッチ』上下(岩波文庫、2004年)
  • 武藤禎夫校注『元禄期 軽口本集』(岩波文庫、1987年)
  • 広津桃子『父 広津和郎』(中公文庫、昭和54年)

いずれも気になりながらも未入手だった文庫本。本日の文庫本ショッピングは計1000円以内に収めようと思っていたけれども、少し足が出てしまった。安藤鶴夫の講談社文芸文庫は解説が槌田満文さんなのでますます嬉しかった。槌田満文さん解説の文庫本は好きな本ばかり、というのが自分内法則なのだった(って、ほんの何冊かしか思い浮かばないけど)。


と、安い文庫本をポンポンと気まぐれに、というのは一番たのしいので、そもそもの目的の『歌舞伎十八番集』は買えたしで、「本日はなんたるよき日ぞや」とさらに歩いてゆくと、またもや新大系が何冊も安く売っている本屋さんに遭遇。

  • 新日本古典文学大系『上方歌舞伎集』(岩波書店、1998年)

『上方歌舞伎集』は1500円であった。一瞬迷ったけれども、見事予算内で発見できたので、今日を逃してはのちのちまで悔やむことになるであろうと購入を決意。うーむ、早稲田おそるべし。こちらは一度読んでいる『けいせい浅間嶽』を最新の注釈とともに読むことができるのが目下のたのしみで、近松半二の『伊賀越道中双六』を読んだあとなので、奈河亀輔の『伊賀越乗掛合羽』を読めるのもたいへん嬉しい。チラリと解説を見てみたら、『伊賀越乗掛合羽』には並木正三の『幼稚子敵討』が投影されているとのことで、『幼稚子敵討』は旧大系の『歌舞伎脚本集』で読むことができるので、そんな岩波の日本古典文学大系つながりが嬉しいのだった。

今年に入って急に、岩波の日本古典文学大系の歌舞伎・浄瑠璃関係の巻を立て続けに入手することとなった。どこの図書館にも例外なく所蔵されているし場所はとるしで、わざわざ買うのは無駄なことだとずっと思っていたけれども、いざ手に入れてみると、やっぱり読む際の愛着は格別なものがあって、ますますのめり込むことができるので、買っておくものだとしみじみ思ったのであった。それに、定価は高いが見つけようと思えばいくらでも新品同様が安く見つかる、というセコい歓びが喚起されるというのもたのしい。まだまだ気になる巻があるので、今後もいろいろと発掘していくとしよう。