週末日記

土曜日は早起きして上野へ出かけた。午前中は国立西洋美術館でのんびり絵を見たり、椅子に座ったりした。お昼は池之端の薮蕎麦。お座敷の雪見窓から雨がシトシト地面につたっているのが見えて、なんともいえない風情。ひさびさに、蕎麦屋で憩う、だった。午後はまたもや池袋のジュンク堂へ。先週見とれた本を買うことができてにっこり。

日曜日、帰宅してラジオのスイッチを入れると、「ラジオ名人寄席」は志ん生の『らくだ』。いい気分で聴き惚れたあと、MD に入れてもらった六代目松鶴の『三十石』を聴いた。舟唄は歌わないけれども、今まできいたなかでこの『三十石』がいちばん好きだ。とにかくかっこいい。


展覧会メモ

  • マティス展&常設展 / 国立西洋美術館 *1foujita2004-10-31

今回の西洋美術館でのマティス展は、画家のプロセス、「絵はどのようにして生まれてくるのか」ということに焦点を当てることで、今まで何度開催されたかわからないおなじみのマティス展に新味を与えている。Process と Variation という単語が展覧会のキーワードになっている。同じ主題の絵を複数見ることで、画家がいかに変奏しているかを見たり、その絵の制作途上の様子を提示することで、画家がいかなる過程を経ているかを見ることができたりする。特に制作途上の展示はマティス自身が画廊での展示会で自ら試みていたことなので、当時の再現を見るという興奮があった。マティスの Process と Variation によって、ひとりの芸術家の作品への対峙を見、美術のみならず文芸など、芸術全般のことを思わせてくれるような展覧会だった。今回のマティス展は初めて見る絵が多くて新鮮だった。ポンピドゥーセンター所蔵の絵がたくさんあって、一度だけ行ったことのあるポンピドゥーセンターのことを思い出したのも楽しかった。上の画像は、ポンピドゥーセンター所蔵の《コリウールのフランス窓》(1914年)。この隣には、窓辺で演奏するヴァイオリン奏者を描いた絵が展示してあった。ここが今回の展覧会で一番好きだった箇所。気を張ってマティス展を見たあとは、おなじみの常設展示をのんびりとめぐって、いつもの通りたいへん満喫。



購入本

  • 酒井忠康『スティーヴン・ディーダラスの帽子』(形文社、1989年)
  • 酒井忠康『奇妙な画家たちの肖像』(形文社、1991年)

先週の日曜日、池袋モンパルナス展のあとのジュンク堂で見かけてうっとりだったのが酒井忠康さんの形文社本2冊。あらためて手にしてみると、やっぱりしみじみ美しくて、思いきって2冊一緒に購入。

 

あまりきれいに写せなくて残念。いずれも表紙は著者撮影のダブリンの町かどの写真が全面にあしらってあって、書名と著者名が配置具合もとてもいい。『奇妙な画家たちの肖像』の方は、ルイ・ル・ブロッキーの油彩画《サミュエル・ベケットの像》が扉画に使われていて、そんなアイルランド気分が素敵で憧れたりも。

美術出版の形文社は一般の書店には卸していない出版社で、池袋のジュンク堂の美術書コーナーでちょっとしたフェアが組まれている。どの本も実に美しくて、ジュンク堂に素敵な本を教えてもらった格好となった。酒井忠康さんをじっくり読んでいこうと思いつつも、他にもまだまだ気になる本がある。また折に触れて手にできればいいなと思う。


日曜日に浅草へ出かけた折、ひさしぶりにきずな書房に足を踏み入れた。とても欲しいとある演劇書を見かけて、しばし惑う。演劇書は先日、武智鉄二(のあまり安くない本)を買ったばかりなので、しばらく間を置くこととしようと気をしずめた。演劇書以外でも、恩地孝四郎の装幀の大衆文学シリーズの1冊に、浜本浩の『浅草の灯』があって、浅草の古本屋の棚にあるというのがいいなあと、島津保次郎の映画を思い出していい気分だった。ほかにもいろいろ迷いつつ、結局今回は、文庫本2冊の買い物となった。

  • 織田作之助『夫婦善哉』(講談社文芸文庫、1999年)
  • ジョルジュ・シムノン/矢野浩三郎訳『モンマルトルのメグレ』(河出文庫、2000年)

武智鉄二を急に読んだり宇野浩二の『大阪』を買ったり織田作之助にメロメロになったりで、今年はわたしのなかで「大阪イヤー」なのかもしれない。講談社文芸文庫の『夫婦善哉』は解説が種村季弘なので嬉しい。

久保田万太郎の『三の酉』気分にひたるべく、また近いうちに浅草へ行きたいなと思っている。とても欲しいとある演劇書はそのときに買えるか買えないか、どうなるかな。