京橋図書館と教文館

雨が降っていないということがこんなに嬉しいことだったなんて、と、心持ちよくウカウカと日没後のひんやりしたなかをテクテク歩いて京橋図書館へ向かった。予約していた本(矢野誠一さんの新刊)が入荷していたので急に行くことにしたのだった。本を返してまた借りて、雑誌コーナーで「演劇界」の劇評を読んだ。劇評を読んで急に歌舞伎気分が盛り上がり、今日は白水社刊の『天衣紛上野初花』の脚本を借りることにした。銀座へ買い物へ行こうとイソイソと来た道を戻り、買い物を一通り済ませたあと、最後は教文館。歌舞伎気分が盛り上がっている今を逃してはならぬと、たのしみにしていた歌舞伎の新刊書を2冊買った。買い物はたのし。ホクホクと家路についた。

購入本

歌舞伎の新刊書を買うのはずいぶんひさしぶり。2冊とも発売をとてもたのしみにしていた。新刊書は買い損ねることがいつも多いので、ひとまずは無事に買えたのが嬉しい。教文館ではお会計のときにカヴァーの色を二色から選ぶことになっていて、毎回「どっちでもいいッ」と心の中で思うのが常だったけど、今日はそれぞれ一色ずつ色違いでお願いして、美しいカヴァーがかかった二冊の歌舞伎書を手にしてご満悦なのだった。

渡辺保さんの新刊を買うのは何年ぶりだろう。『劇評家の椅子』以来だと思う。「型」の本ということで、こういう本を待ち望んでいたのだ! と今度ばかりは発売前からとてもたのしみにしていた。まだかしらまだかしらと教文館に足を踏み入れるたびに欠かさずチェックしていたつもりだったのに、新・読前読後(id:kanetaku:20040919)を拝見してすでに刊行されていたことをやっと知ったという体たらく。雑誌「新潮」の近松門左衛門に関する連載をまとめたものが11月に発売になるとのことで、こちらも今からとても楽しみだ。わたしのなかでは『劇評家の椅子』以来の渡辺保ブーム、なのかも。遅れ馳せながら『歌舞伎ナビ』も欲しくなってきた。

『歌舞伎 型の魅力』は直接「型」の勉強をしようというのはもちろんだけど、過去の演劇書のガイドブックとしてもとても面白そうな気がする。渡辺保さんがいろいろ引用しているのを見て、ますますいろいろ演劇書をひもときたくなる感じ。今年岩波文庫で出たばかりの三木竹二の『観劇偶評』が数多く言及されているのを見て、ますます三木竹二を読もうと思ったりもして、岡鬼太郎三宅周太郎をきちんと読まねばと思ったりか、実は持っている杉贋阿弥の『舞台観察手引草』を思い出してメラメラと燃えたりとか、わたしとしてはそういうのがとても楽しいのだった。「型」の研究ということを最初にしたのは三木竹二だった。戸板康二からさかのぼって近代の劇評をたどってゆくと三木竹二に至る。そうか、「型」を見るということは、近代劇評を見るということでもあったのだと、しごく当たり前のことにハッとなった。

今ぺらっとめくってみたら、五代目菊五郎の福岡貢の写真があんまり美しいので惚れ惚れと見とれてしまった。いつまでも見ていたい。

こちらもとっても面白そうで、手にとってワクワクしている。著者の荻田清氏の名前は、去年に買った岩波の「落語の世界」の『落語の愉しみ』に入っている上方落語に関する文章がとても面白かったということで印象に残っていて、そんなこんなで『笑いの歌舞伎史』もとてもたのしみにしていたのだった。このところますます上方に興味津々だったり落語が好きだったりしたので、そういう面から歌舞伎を見直すということができそうで、現在の関心にピタリとはまっているありがたい一冊。詳細な注釈や図版が嬉しい。本文の文章もちょっと読んだだけでとてもいい感じで嬉しい。こういう、きちんとペダンティックでなおかつ親しみがわく、というような歌舞伎書がこれからもっと出るといいなあと思う。

今ぺらっとめくってみたら、マキノ正博監督、長谷川一夫主演の『男の花道』のことが書いてあった。この映画、初夏のころ、阿佐ヶ谷で上映されていてぜひとも見たいと思ったのにスケジュールが会わなくて無念だった。いつか見たい。映画では三代目歌右衛門が女形の役者になっている、と書いてある。『男の花道』は以前林家正雀さんの落語で聴いたことがあって、芝居噺仕立てでたいへん堪能したのだったが、そのときの歌右衛門がどうだったかなあと思い出そうとモンモンとなって、そうだ、正雀さんのときの歌右衛門は『ひらかな盛衰記』の松右衛門をしていた! と思い出した(たしか)。だからなんだと言われそうだけど。