映画メモ

  • 『その前夜』萩原遼 *1 / 東京国立近代美術館フィルムセンター《映画女優 高峰秀子 (1) 》*2

映画が始まってスクリーンに「山中貞雄に捧ぐ」という文字が出ただけでジーンと感激。山中貞雄の名前が出ただけで胸がいっぱいで本特集ではなにがなんでも見たいと思っていた映画のひとつだった。無事に見られてよかった。加東大介の『南の島に雪が降る』を読んだ直後だったので、さらに気分が盛り上がっていたのもよかった。おなじみの新撰組を描きつつも、その脇にいる一般の町人をこの映画は中心に据えているという、その視点がとても面白かった。そういう群像劇を眺めるのがたのしくて、山田五十鈴と高峰秀子が姉妹というのが嬉しいかぎり。どちらかというと山田五十鈴の方がメインで、その女性の役の強い部分と弱い部分とを巧みに実在化させている女優ぶりがいつもながらに素敵で、その美しさにも惚れ惚れ。山田五十鈴が出ているとそれだけで嬉しいなあと思う。高峰秀子の共演映画で特に大好きな映画が多い気がして、頭の中で思い出したりも(『樋口一葉』『昨日消えた男』『流れる』……)。将棋をさしに行くお父さんのくだりが落語の『笠碁』っぽかったりもして、特にはなんということはないのだろうけど、登場する人々のところどころのちょっとしたところがいい感じで、映画全体のトーンがよかった。前進座を見て日本演劇史の勉強をしたくなったり、手持ちの分厚い『山中貞雄作品集』をひさびさに読みふけりたくなったりと、余波が結構たくさんあるのだった。

幕末に起きた新撰組の池田屋襲撃事件を題材にした本作は、近所のしがない宿屋の人々の視点から描かれている。日中戦争で戦病死した山中貞雄原案の「木屋町三条」を“鳴滝組”が脚色し、追悼作品として映画化。山中の遺作『人情紙風船』同様、前進座一党が出演した。(チラシ紹介文より)