安楽椅子探偵

このところ、朝は、シューベルトの《美しき水車小屋の娘》を流している。フィッシャー・ディースカウとムーアの定番ディスク。今日はちょいと早めに家を出た。7曲目の「いらだち」の途中だった。その冒頭からのたたみかけるようなピアノの三連音が、一日中ずっと耳に残っていた。

今朝はちょいと早めに家を出て、喫茶店でコーヒー。読みさしだった久生十蘭の『だいこん』がもう少しで読了というところだったので、ラストのところをじっくりと読んだ。ヒロインの「だいこん」が、バッハの平均律のハ長調のフーガをピアノで弾くシーンにワオ! となった。

帰りは京橋図書館へ。本を何冊も借りて、タリーズへ直行。忠臣蔵九段目の浄瑠璃をじっくりと読んで、川本三郎さんの『本のちょっとの話』をホクホクとめくったあと、広津桃子の『石蕗の花 網野菊さんと私』の冒頭の「石蕗の花」のところを読んでじんわりと胸がいっぱい、対象の網野菊さんの姿もさることながら、広津桃子さんの文章の美しさに心底参る。目がウルウルになった。

購入本

  • 戸板康二『奈落殺人事件』(文藝春秋新社、昭和35年)
  • 都筑道夫『退職刑事1』創元推理文庫
  • 都筑道夫『退職刑事2』創元推理文庫
  • 北村薫『空飛ぶ馬』創元推理文庫

月曜日に『奈落殺人事件』が届いて夜さっそく読みふけった。一気に読んだ。ひさしぶりに読む、戸板さんの中村雅楽シリーズ、初期からちょっとだけ先に進んだあたりの、後年の雅楽ものの味わいまではまだ行っていないような、本格と後年の素地との混じり具合がとてもいい感じで、昭和30年代っぽい風俗みたいなものになぜだか和んでしまった。と、『奈落殺人事件』を読んで急に、推理小説で和みたい! という気分になって、翌日の昼休みにさっそく本屋さんへ物色へ。「安楽椅子探偵」という文字にメラメラとそそられて、都筑道夫の『退職刑事』を買って、さっそくコーヒーショップで読み始めて、止まらなくなってしまった。

ここで扱われる事件、いささか下世話ではあるけれども、父の退職刑事が息子の現役刑事の話からいろいろ推理するというシリーズ、この「安楽椅子探偵」パターンがじつに面白い。人形町の「うぶけや」の和鋏で新聞の切り抜きをしていたり、と、明治の下町育ちの父のちょっとした描写がいい感じだったりする。配役は誰がいいだろうとちょっと考えてしまう。それから、殺人事件現場が自分の家の近所だったりと、ちょっとした都市描写が面白い。ハマってしまった。今日の昼休み、『退職刑事』の2冊目を買って、またもやさっそく途中まで読んだ。

戸板さんの小説を読んで、心穏やかになる推理小説を読みたい! というそもそもの動機は、ずっと気になっていた北村薫の円紫師匠シリーズで果たせるのではないかしらと、午後急に思い立って、京橋図書館へ行く途中の教文館で北村薫を買った。

と、一方で、急にミステリ気分になっている。たまにミステリを読みたくなって、たまに夢中で読んだりする。そのちょっとした気分転換がたのしい。